大事なのはキャッシュとコア

不動産業は主に4つの業種から成り立っています。
まずは仲介業。
大きく分けて売買仲介と賃貸仲介の2つ。
次に分譲業。
マンションデベロッパーや建売業がこれに当たります。
あと2つが賃貸管理業と賃貸オーナー業。

物件を借り上げてのマンスリーマンションやコインパーキングは、あえて言えば「不動産運用業」とでも言いましょうか。
この「不動産運用業」が今後は専門化し、伸びてくると思うのです。
不動産コンサルタント業という分野も段々と確立されてきました。
税理士や土地家屋調査士や弁護士のように、「士業」としての然(しか)るべき資格が出来てもいいかもしれません。
「不動産コンサルティング技能資格」というのがあり、私も持っているのですが、この資格は影が薄く、社会的な認知があるとはとても思えません。

仲介業や管理業は資本が少なくていいという特徴があります。
従って新規参入もしやすいわけです。
不動産の取引はすべてキャッシュなので、売掛金や未収金の発生は基本的にはありません。
また手形取引は一切ありません。
私も35年ほど不動産業に従事していますが、いまだに現物の「手形」を見たことがありません。
手形を発行したり受け取ったりしないから、不動産業は案外しぶとく生き残れるのです。

仲介業や管理業で借入金が多いのは危険です。
逆に言えば業態的に借入れが発生する余地がないはずです。
分譲業や賃貸オーナー業では借入れが必要かもしれませんが、それでも少ないに越したことはありません。
景気が悪くなると、生き残れるか残れないかのポイントは、借入れが少ないか多いかに集約されます。

仲介業や管理業は、どちらかと言えば「労働集約型」。
営業形態的には「仲介業」はハンティング型。
それに対し「管理業」はファーミング型。
経営的な安定感は管理業の方が圧倒的に上だし、不動産業の中でも今一番元気なのは賃貸管理業です。

どの分野に重点を置いていくかは、会社の歴史や社風、あるいは経営者との相性などが関わり、一概に言えないのですが、やはり何かに特化していくのがいいように思います。
特化し専門化していかないと、これからの時代、生き残りは難しいように思います。
「狭く、深く」がキーワードなのです。

当社の方針は「脱・労働集約型」。
「人手のかからない累積経営」を目指しています。
賃貸オーナー業に移行していきたいと思うのですが、エリアは住宅やオフィスの場合は店から歩いていける範囲。
コインパーキングの場合は宝塚市限定。
いい物件が売りに出た時の購入資金のためと、「まさか」に備えるために、キャッシュをためていく必要があります。

キャッシュを厚くするためには、当然しかるべき経常利益は不可欠ですが、B/Sの「総資産」勘定を見直し、キャッシュを生み出す工夫をしたいのです。
「売上高利益率」ではなく「総資産利益率ROA)」が重要なのです。
理想的なB/Sは潤沢なキャッシュ・ポジションと借入れゼロ。
土地・建物・車両・機械等の科目を出来るだけ小さくします。
経営者がシンプルライフを目指していると、会社も自ずとシンプル経営になるはずです(贅沢や見栄を張らないため)。

少人数で損益分岐点を出来る限り低く。
そのためにもITの活用は不可欠です。
背が低いと強風の影響も受けにくいし、重心が低いと船はひっくり返りません。
人手が足らない分は、それ以上手を広げないか、あるいはアウトソーシング
まずは自社の得意とするコアは何かを見極めるべきなのです。