『売上を、減らそう。』

『売上を、減らそう。』(中村朱美・ライツ社・1,500円)という本を読みました。

経営書としては久々にいい本と出合いました。

著者は京都でステーキ丼専門店を経営しているのですが、1100食に限定し、100食が完売になれば、その日はお店を閉めてしまいます。

あまりにお客さんがお店の前に並ぶものだから、朝から整理券を発行するようにしたそうです(ちなみに予約不可)。

そうするとお客さんに2度お店に足を運んでもらうことになるのですが、その分、コミュニケーションがよく取れ、それをサービスに活かせるようになったとのこと。

100食限定なので、従業員は午後6時ごろには帰宅することができ、飲食業のブラック企業的体質とは完璧に一線を画しています。

また100食限定なので、食材のムダもありません。

その分、食材の原価率を上げ(つまりいい食材を使い)、美味しいものを提供(だから大人気)。

スタッフも少し多い目に雇うことにより、顧客へのサービスを充実させています。

スタッフがヘトヘトだと、いいサービスが出来るわけがないからです。

「かんてんぱぱ」の塚越寛会長が説く「年輪経営」と考え方がよく似ていると感じました。

本来の資本主義は、自らを律して経済を発展させ、世の中を良くしていこうという、キリスト教宗教改革の当初の精神と合致していました。

それが段々と「自分さえよければ」という強欲資本主義に変化していったわけです。

「もっと売上を上げよう」とか「もっと会社を大きくしよう」といった「もっと、もっと」病が蔓延し、それで働く人が幸せになればいいのですが、どうもそうでもないということに人々が気づきだしました。

ここにきて少し風向きが(いい方向に)変わってきたような気がするのです。