身につまされる本を読みました。

『毎日通いたくなるスーパーの秘密』(福島徹・実業之日本社・1,500円)という本を読みました。
著者はスーパーの現役経営者です。
さまざまな失敗を重ねて、今の業態にたどり着きました。
決して拡大路線ではなく、顧客にどう喜んでもらえるかが基本の営業戦略です。

この人の場合、スーパー1号店は比較的楽に成功しました。
また同時に経営していた酒屋やコンビニや八百屋も大いに儲かっておりました。
そして「欲の塊(かたまり)」で2号店を出店。
37歳でエネルギーに満ちあふれていた時期でもありました。

結論から言うと、これが大失敗。
ひと言で言うと、顧客の存在を忘れた「売上第一主義」が失敗の根本原因でした。
経営者である著者の体調も顔つきも悪くなり、お店の雰囲気も悪くなり、当然売上もどんどん下がっていきました。
この時「店の空気を台無しにしているのは、経営者の態度」だということに気づいた経験は大きく、それが今の繁栄につながっているとのこと。

若い頃の著者は、エネルギッシュで野心に満ちていました。
一刻も早く複数店舗を持つ経営者になりたいと、躍起になって働いていました。
店舗数を増やしたい、商圏も広げたいという拡大路線に経営者が走ってしまうと、自分たちの働く意欲やモチベーションがすべて「会社を大きくしていく」ことや「効率的なオペレーションを考える」といった組織や仕組みのやり取りにシフトしてしまいがちです。
そのことに2号店の失敗で気がつき、その後は地に足がついた経営を行うようになりました。

著者が他社のスーパーの再建を頼まれた時のお話です。
再建依頼を頼まれたのは、店舗数が4店という中堅スーパー。
まずはそこの社長と“とことん”話し合い、その本気度を確認。
そして4店舗のうち2店舗を閉鎖し、とりあえずの出血を止めました。

「売り場に愛情がない」が著者が見た第一印象。
そこの社長と一緒にトイレ掃除から始めました。
これがすべてのスタート。
クリンネスを徹底させると、必ず粗利がアップするのだそうです。
お店をキレイにすると、従業員の気持ちも整い、商品の陳列も自然にキチンと整い、顧客も戻ってきて、すべてが良い方向に循環し、黒字に転換したとのこと。
「畏(おそ)るべし掃除の力!」なのであります。