経営の神髄

破産専門弁護士のことを「サンドイッチ弁護士」と呼ぶのだそうです。

「挟んで(破産で)食べている」とのシャレとのこと。

ある破産専門弁護士の本を読んだのですが、その人は最初、会社の決算書が全く読めなかったのだそうです。

しかし裁判所に書類を提出するためには経理や財務のことが分かっていないと話にならず、会計を猛勉強しました。

当時その人には3つの思い込みがあり、ひとつは「会社の経営者は全員が決算書が読めるはず」であり、もうひとつは「どこの会社にも経営理念と事業計画があるはず」であり、そして「税理士は全員が会社経営のアドバイスができるはず」というものです。

すべてが幻想だったことは、法人の破産申告を何件かやっている間にすぐに分かったとのことです。

あるとき経営の危機に瀕した、ある運送会社の2代目社長の再建の手伝いをしました。

2代目社長は、燃費を削減するためにタコメーターを設置したり、運転手とのコミュニケーションを取ろうとしたり、安全運転のポスターを貼ったり、あるいは自己啓発セミナーに出たり、経営者の会に入ったりしましたが、なかなか事態は好転しませんでした。

ドライバーの採用に力を入れても、同じ数のドライバーが辞めていく始末。

あるとき2代目社長は、突然会社の近くに引っ越ししました。

出社時間は以前は9時でしたが、朝5時前には出社するようになりました。

朝5時に深夜便のトラックが戻って来るし、早朝便も出発するからです。

結果、平日ゴルフも夜の飲み屋へも全く出向かなくなりました。

毎朝5時には会社の駐車ゲートに立ち、安全灯を振ってドライバーを「ご苦労さま!」と迎え、「ご安全に!」と送り出します。

するとその後、みるみる燃費も良くなり、事故も減り、離職率も下がり、長年の赤字から脱却し、わずかながらも利益が出たのだそうです。

そしてほとんどの社員が、2代目社長を尊敬するようになったとのこと。

この話を読み、経営の何たるかが分かったような気がしました。