中核事業に集中

従業員が何万人もいるような大企業だと、その関連の不動産会社一つとっても、上場したっておかしくない規模があります。
現にヒューリックという会社は、元・富士銀行の不動産管理会社でした。

とても元気な会社なのですが、三菱地所三井不動産ほどは大きくないので、自社の器に見合った規模の不動産に絞って事業を展開しています。
またマンション分譲などの事業も敢えて行っていません。
この戦略が今のところ、非常に功を奏しているわけです。

NTT都市開発という会社がマンション分譲やビルの賃貸部門で頑張っています。
これなどはNTTの子会社であったわけですが、今や押しも押されぬ不動産会社になっています。

三菱重工が全国に散らばっている不動産関連子会社8社を1社に統合させました。
工場施設管理業務だけを子会社に残し、その他の分譲業や賃貸業はすべて孫会社化しました。
話はそれだけにとどまりません。

その孫会社の株式の7割をJR西日本に970億円で売却したのです。
つまり三菱重工にとっては中核でない事業から撤退し、モノづくりの本業に徹するという意志を示したわけです。
逆にJR西日本は不動産事業を中核事業にしていく意向です。

鉄道会社の収益構造を見ても、本業の鉄道での儲けよりも、不動産事業の儲けの方が大きいところがあります。
つまり一見電車を走らせている会社のようだけど、ホントのところは不動産会社かもしれないという実態なのです。
鉄道会社と不動産会社とでは社員の気質が違ってきます。
不動産管理業だとまだ鉄道業と気質は似ているかもしれませんが、分譲業ともなると全く別です。

時代の変化とともに、その企業の中核事業が変化していって当然だと思います。
むしろ変化しない方がリスクが高いわけです。
中には、デジカメの出現でフィルムという中核事業自体がなくなってしまうという例さえあるのです。
会社の中にあるいくつかの収益の柱の中で「あすの事業」を選択し「きのうの事業」をやめる決断が、名経営者か否かのバロメータの一つになるのではないかと思うのです。