得意分野に特化する

ヒューリックという東証一部の不動産会社があります。
富士銀行の不動産管理会社からスタートしているのですが、今や注目される不動産会社に変身しています。
この会社は「やらないこと」を先に決め、事業を進めているのです。

「やらないこと」の第1は「海外事業」。
やはり海外はリスクが高いのです。
不動産事業においては「土地勘」というのは非常に重要で、国内でも失敗することがあるのに、海外だと日本国内の3倍以上の注意が必要です。
また意識しなければいけないのに、意外に抜けているのが「為替リスク」。
為替リスクまで背負うのは、不動産屋の限界を超えています。

次にやらないのが「分譲マンション」事業。
これも景気の上がり下がりによって、結構リスクが高いのです。
マンションデベロッパーは、財閥系や電鉄系を除くと、供給量ナンバーワンになったところから倒産していくという歴史があります。

ヒューリックの本業は貸ビル業なのですが、三菱地所三井不動産が手掛けるような超高層ビルなどには手を出さないのです。
それよりも少しランクを下げたビルの経営を得意としています。
また次の一手としては観光事業(例えばホテル経営)にジワリと進出しています。

要は他社と競合しない分野で、着実に不動産賃貸業を少しずつ拡大して行っているわけです。
自分の体力を知り、自社の得意分野に特化しようとしており、この姿勢は好感が持てます。
ただし貸ビル業の宿命で「有利子負債」が「利益剰余金」をはるかに超えているのと、「配当利回り」が“やや”低いので、私自身は株の購入にまでは至っておりません。

富士重工は社名を近々「スバル」に変えますが、ここ数年間で1番成功した会社の一つではないかと思います。
これもまた商品や販売エリアや技術を、自分の得意な分野に絞った戦略がピタリと当たった結果と言えましょう。
商品はSUV一本。
また販売エリアは北米と日本。
技術はアイサイト。
それ以外は「捨てた」と言っていいほど得意分野に特化したわけですが、その結果が「作っても作っても足りない」状態をもたらしています。
「得意分野に特化する」…私はこれを生き残るための唯一の道だと思っています。