2012年を考える その2

ヨーロッパ経済に目を向けると、やはり相当厳しいわけです。
ヨーロッパはリーマンショックまでの10数年、好景気を謳歌してきました。
好況な上にユーロ高だったので、ヨーロッパでちょっと“こまし”なホテルに泊まろうとすると、一泊10万円ぐらい取られるケースは“ざら”だったように思います。

経済の好調がしばらく続くと、不動産投資が増えるというのは、洋の東西を問わないようです。
特にイギリスやスペインでは不動産投資が活発でした。
イギリスにはアラブの石油資金が流れ込み、またスペインは他のヨーロッパ諸国からの投資が顕著でした。
「山高ければ、谷深し」なのです。
いったん経済が逆回転し出すと、一挙におかしくなっていくのは私自身経験済みです。

PIIGS問題があります。
ポルトガルアイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字を取って「ピッグズ」(つまり豚)。
いずれも財政に問題がある国です。
今はギリシャがクローズアップされ、国がつぶれるかどうかの瀬戸際だといっても、けっして大袈裟ではありません。
特に、今まで優遇されてきた公務員の所得カットは避けて通れない問題となっています。
実際、それに反対するデモで、死者まで出ているのです。
ちなみにその大事件も、新聞記者たちのストで、しばらくの間報道されなかったとのことです。

ドイツ人の間には「なぜ自分たちの税金を使って、怠け者のギリシャ人たちを助けなければならないのだ?」との反発があります。
ドイツはユーロ圏が出来たことにより、関税などの問題をクリアしてスムーズな輸出が出来るメリットや、今のユーロ安で、ユーロ圏以外への輸出が伸びるというメリットも享受しています。
従ってドイツ自身がユーロ圏を破壊させる動きをするわけにはいかないのです。
またドイツの銀行もPIIGSに多額の債権を持っています。
これらをデフォルトさせて、債権を「ぱあ」にしてしまうのは、非常に具合が悪いわけです。
つまりPIIGS問題は、資金を貸しているドイツの銀行問題でもあるわけです。

こういった問題を抱えたEU経済の問題が、来年にかけて良くなっていくことは、まず考えられません。
当面厳しい状況が続くことは間違いがないでしょう。
つまり2012年は、この先EUがどう転ぶかの瀬戸際でもあるのです。
政治の世界でも軍事の世界でも、カリスマや英雄が、たまに出現します。
そういった意味で、マクロ経済もしくは金融の世界においても「名経営者」ともいうべき存在がどうしても必要な状況になってきたのです。