私は学校を卒業して以来、不動産業にどっぷりと浸かっています。
年数にして30数年。
振り返ってみて、不動産業というのは3勝7敗、ひょっとして2勝8敗の業界ではないかと思います。
30数年のうち、確かに5,6年は良かったように思いますが、あとはそんなに良くないか、もしくは大変良くない状態であったように思います。
*
繊維業界で一番肝心なのは在庫管理だそうです。
ある商品を販売し、半分ぐらいは問題なく売れる。
しかしあとの半分がなかなか売れない。
これをいかに「うまく損を出して」売り切るかが、成功するためのキーポイントとのこと。
この伝でいくと不動産業界は、良かった時の3年の蓄積で、いかにあとの7年をうまく乗り切っていくかが、生き延びるためのキーポイントなのかもしれません。
*
不動産業界への融資も、個人への投資資金や住宅ローンも厳しくなってきました。
借入れに頼り、在庫を抱えている不動産会社の中には、資金繰りに窮するところも出てきたようです。
不動産はブームが過ぎると、あっという間に売れなくなる嫌いがあります。
いま完成しても完売していない分譲マンションが50%を超えているそうです。
*
需要が弱まり、在庫が増えだすと価格は下がります。
しかし高値の仕入れや建築費の上昇で、販売価格の引き下げが難しい場合も少なくありません。
そうすると売れない…という悪循環。
損切りをするにも体力が必要です。
マンションデベロッパーの中には、仕入れた土地を更地のまま売却したり、コインパーキングに転用したりするケースも出てきました。
*
不動産業界内に滞留していた在庫の放出や、企業の不必要な不動産の売却、また株価下落で不動産を手放す個人投資家など、これからは市場に物件がたくさん出てくることが予想されます。
何と言っても、不動産ファンドに購入の勢いがなくなり、買い手に回ったのが大きいですね。
*
しかしながら逆に言えば、これからは絶好の買い場の到来。
キャッシュポジションを高めておけば、意外な掘り出し物に出会う可能性があります。
収益物件の利回りも高まっていきそうです。
*
地方都市では新しいオフィスビルが供給されていくと、需要の方のパイは同じなので、たちまち供給過剰に陥ります。
したがって空室増へ。
古く利便性の悪いビルが、一番大きな影響を受けそうです。
居住系の場合も同じで、大阪のワンルームで、賃料が4万円から2万8千円へ下がった例もあるそうです。
*
新築住宅市場は厳しいけれど、リフォーム市場は好調。
建売や新築分譲マンションは販売不振だけれど、割安感のある既存住宅(中古住宅)は比較的好調。
また魅力ある利回りの収益物件が市場に出てくる可能性あり。
不動産市場は、ざっとこんな感じでしょうか。
ガソリンの値段をはじめ、身近な諸物価が上がり始めています。
今後の不動産業界では「値頃感」のある価格・賃料設定をすることがとても大切だと思われます。
また大量供給は需給のバランスを崩すだけ。
市場に合った「適正数」も大事です。
*
ある老舗マンションデベロッパーでは「都心部コンパクトマンション・シリーズ」を打ち出しています。
都心に限定。
駅から5分以内。
1LDKや2LDKが中心。
そこにはハッキリとしたコンセプトがあります。
リゾート物件を再生させる達人である「星野リゾート」では、最初にコンセプトを徹底的に考えるといいます。
不動産業界においても、今後はまずコンセプトをしっかり決める必要があるように思います。