ロンドンへの旅 その6

以前に両替したポンド紙幣が使えなくなっているのを現地に来てから知りました。
タクシーなどでもクレジットカードが使えず、こうなると動きが取れなくなります。
11年前にイギリスに来た時に両替した紙幣を、今の換算で30万円ほども持っており、これをギブアップするにはちょっと惜しいわけです。
以前になぜそんなに両替したのかは、今となっては全く不明です。

ホテルのコンシェルジェに相談すると「普通の銀行では交換してくれないから、バンク・オブ・イングランドに行かなければならない」とのこと(バンク・オブ・イングランドは、日本ではイングランド銀行とも呼ばれ、イギリスの中央銀行で、日本で言えば日銀のようなものです)。
コンシェルジェが新旧紙幣交換の手続きの詳細を銀行に電話で問い合わせてくれると「旧紙幣と新紙幣とを交換するには2つの本人証明書が必要」ということも聞かされました。

証明書の一つはパスポートがあるのでノープロブレム。
でももう一つがありません。
本人の住所の証明書が必要とも言われ、どうしようかと日本大使館にも問い合わせることに。
が、結論から言うと大使館での証明書発行はムリとのことです。
アメリカンエクスプレスのコンシェルジェ・サービスにも問い合わせましたが、ここでもダメ。

いよいよ窮地に立たされましたが「アカンで元々」と直接イングランド銀行に行くことにしました。
歩いては行けない距離なのでタクシーを利用することになりますが、何せ持っている紙幣が使えないのでタクシー代がありません。
するとホテルが現金で50ポンドを貸してくれました。
ホテルの精算はクレジットカードで行うので、その時にオンされるというわけです。

今日の予定は「ホップオン・ホップオフバス」(乗り降り自由な2階建て屋根なしバス)に乗って観光しようかと思っていたのですが、予定を取りやめ、新旧紙幣交換業務に集中することにしました。
伊勢神宮に毎月お参りに行っていると、こんな時でも「天照大神(アマテラスおおみかみ)がお守り下さっているから大丈夫」と結構楽観的になるのです。

旅の困難は後になってとても印象深いものになるということを体験しているので、どこかでちょっと楽しんでいる気持ちがありました。
そうでないと行きのタクシーの中では心配でたまらなかったと思います。

イングランド銀行に到着すると、威厳のある歴史的な建造物が目に入りました。
中に入ると、これまた威厳のある制服を着た人がいて(でも親切でした)、この人に貨幣交換をしたい旨を伝えました。
書類に記入し、列に並んで待っていました。
自分の番になって旧紙幣を渡すと、拍子抜けするぐらい簡単に交換してもらいました。
ホッとしました。
緊張していただけに体から力が抜けていくのを感じました。