上海への旅 その5

ブログを書いていたら次のようなコメントをいただきました。
『中国の不動産市場とかバブルの崩壊を出口さんは、来年あたりと予測していますが、今回の訪問でその点、どう感じましたか?
よければ、ブログにて市場(不動産に限らず、投資的な面で)をどう肌で感じたか書いていただければうれしいです。』
ということで、ちょっと書いてみます。

ある勉強会で知り合った不動産会社の経営者が「中国の不動産バブルは既に崩壊している」ということをおっしゃっていました。
その人は中国の生(なま)の経済を知るために、昨年5,6回中国を訪れました。
どのようにして情報を得るのかというと、現地でガイドを雇い、いろいろなところに連れて行ってもらうのだそうです。

例えば中国の新幹線は、空気を運んでいるようなものでガラガラとのこと。
一両に乗っている乗客は数人です。
その理由は、ひと言でいうと料金が高すぎるから。
先日、中国の高速鉄道でヒドイ事故があり、30数名が亡くなったのですが、あれだけの事故でその程度の犠牲者であった理由は、ガラガラだったからでもあります。

莫大な鉄道投資をしてガラガラの利用状態だと、普通は経営が成り立ちません。
いくら社会主義と言えども、その歪(ひずみ)は必ずどこかに出てくるはずです。
新幹線にとどまらず、中国のいたるところで、そういったイビツな投資が大手を振って行われているとみて間違いありません。

リーマンショック後、中国は景気カンフル剤として50兆円を超える資金を市場に投入しました。
金融もジャブジャブ状態。
それが実需につながる投資に向かえばいいのですが、実際は不動産投機に向かったのではないかと推測されます。
日本のバブルでもそうでしたが、国全体が一大鉄火場となった様相があります。

今回の上海訪問でも、世界一の高さを奪回するために、新しい超高層ビルが既に建築中であることを知りました。
オフィスの需給に則(のっと)って建築するのではなく、一番の理由は「メンツ」。
こういった経済行動は必ず反動が来るのです。
ちょっと儲かった会社が豪華な自社ビルを建てたあと、会社の経営がおかしくなることに似ています。

大連では飛行機から、数十棟のマンションがすべて建築中という一団の建築現場を見ました。
建てることが目的になってしまい、販売のことをすっかり忘れているのではないかと思いました。
また成都では超高層マンションに、夜ほとんど電気がついていないことを、自分の目で確認しました。
どう考えてもバブルなのです(自分がバブルを体験しているので、その心理状態もよく分かるのです)。

中国では暴動がよく起こっていると聞きます。
中国の歴史を紐解くと、地方(農村)の暴動や反乱から王朝が変わることが少なくありません。
今回の旅では、そのような兆候が見られないかと観察していたのですが、成都でも上海でもそれは全く感じられませんでした。
それなりに社会は安定しています。
ただ「山高ければ谷深し」で、経済面での揺り戻しは2012年あたりに必ず出てくると思うのです。