コインパーキング事業

コインパーキング事業をやっていると、従来の不動産仲介業などとは違った、新しい経験をすることがあります。
コインパーキングは最初の立地が非常に大切で、立地の選択を間違えた場合は、ちょっと修正不可能です。
その場合は「撤退」が正解なのだと思います。
一に立地、二に立地、三、四がなくて、五にやっと「料金設定」や「きれいさ、明るさ、入れやすさ」などが入って来るように思います。

仲介業だと、売上が上がらない場合は、まずは「営業努力が足らない」と気合を入れなければならないわけですが、コインパーキングの場合は営業努力というのがほとんどなく、売上の上がり下がりは、まさに市場の動きそのものを表すケースがほとんどです。
従ってこちらの営業努力のことで悩まなくてもいいので、単純にマーケットのみのことを考えればいいだけなのです。
例えば「連休が続いたから売上に影響があった」とか「近くで工事があったから、工事車両の売上が上がった」とかです。

「市場には顧客とライバルしかいない」という言葉を聞いたことがあるのですが、コインパーキングを運営していると、その言葉がまさに実感として捉えられます。
まず顧客のいないところにコインパーキングを設置するわけにはいきません。
コインパーキングにとっての顧客とはクルマそのものですから、クルマの駐車需要のないところでは、最初から事業は無理ということになります。

土地を借上げてではなく、購入してコインパーキング事業を行う場合、適地を探すのに随分時間がかかります。
「立地」で失敗すると後戻りできないからです。
地域を限定して探せば「年に一つあるかどうか」といったペースです。
その点「借上げ」で行う場合は、適地のオーナーのところに営業マンが出向き、いい土地を拾い上げてくるわけですから、「購入」の場合よりも運営の数は多くなります。

コインパーキングに適した土地を見つけてオープンし、目論見通り順調に売上が上がっていっても、ある日突然ライバルがすぐ近くに登場したりします。
コンビニなどの優良店などの場合でも、近くにライバルが出来ると、あっという間に売上が半分になったりするケースも少なくないようです。
私もコインパーキングでは何度もそういった目に出会いました。

ライバル登場で大幅に売上が下がった場合、料金を値下げするか、そのまま耐えるか、あるいは撤退するしか方法がありません。
営業努力という手が使えないからです。
特にコインパーキング事業の場合は、NO.1の会社にあまり「共存共栄」という考え方がなく、厳しい戦いを強いられるケースがあります。

土地を借上げている場合、売上が地代を下回ると赤字になってしまいます。
逆に自社所有の土地だと、そんな場合でも耐えることが出来るわけです。
「土地を持続して所有するために、コインパーキングで固定資産税分を稼いでいるのだ」くらいのどんとした気持ちで構えておればいいのかもしれません。
コインパーキングは一種のロボットなので、人件費がかからないからです。

「市場には顧客とライバルしかいない」がよく分かるコインパーキング事業は面白いのです。
売上が下がっても営業努力を反省しなくていい分、気持ちが楽です。
しかし地域が繁栄しないと、コインパーキングも繁盛しません。
だから自社の営業努力とか言った小さな話ではなく、地域全体を活性化させるにはどうすればいいのかを考えていきたいとも思うのです。
それが地元事業者の使命でもあります。