不動産事情の変化

サブプライム問題は世界の金融市場に、予想以上の影響を与えそうな気がします。
サブプライム・ローンは、不動産が値上がりしていくことが前提のローンです。
不動産が値上がりさえしていれば、金利の高さなど問題にならないのですが、これが一度反転しだすと、すべてが逆回転していくのです。

日本はバブル崩壊先進国ですから、その経験から言えば、損失の確定をしたと思ったら、相場がより下がり、もっと損失が出てしまいます。
損切り額を決められないことに対し、金融市場は大きな不安を持たざるを得ないのです。
サブプライム・ローンの問題で、不動産業界におけるファンドの勢いは完全に失速したようです。

金融情勢の変化は不動産業界に大きな影響をもたらします。
加えて建築確認が長期化。
マンションデベロッパーの中には、事業計画に狂いが生じ、資金繰りが悪化するところも出てきそうです。
実際今年6月以降の住宅着工数が急減しています。
すなわち予定の資金回収が遅れるということでもあります。
建設会社の倒産が4,000件を突破しました。

分譲事業にブレーキがかかるわけですが、住宅や不動産への需要も減退しているので、案外、需給のバランスが取れるかもしれません。
住宅・不動産業界は「パイの縮小の中での均衡」という動きになるのかもしれません。
実需に即した価格や条件の不動産のみが、市場で通用するのだと思います。
だからバブルっぽい物件には手を出さない。

住宅賃貸市場は空室で困っているのに、貸家着工が続くという不思議な現象が続いています。
余ったお金が賃貸投資へと向かっていっているからでしょう。
同じ賃貸でも、非住宅分野(例えば駐車場・店舗・倉庫・貸し会議室など)は堅調です。
ランクルームやコインパーキングの市場は伸び続けています。
個人投資家の投資先は、今までほとんど賃貸住宅だけでしたが、もっとバリュエーションを広げてもいいのではないでしょうか。
ちなみに競争力を失った賃貸物件は、売却が一番いい解決法かもしれません。

東京のオフィス需要は底堅いものがあります。
ただあとの大阪を始め、地方中核都市には空室を埋める経済的実力が備わっているかどうかは疑問です。
東京国と日本国とは別の国だと考えた方が、間違いが少なくていいのです。
大都市と地方の格差は、ある意味では時代的な多いな流れであって、政治の力だけではどうしようもないところが、実はあるのだと思います。

不動産業界における今後のキーワードは「実需」。
「値ごろ感」と言い換えてもいいかもしれません。
投資の世界だって、バブルではない「実需の投資」があるのです。
また不動産需要を引っ張っていくのは、団塊世代や富裕層。
これらの層の「関心事や購買心理」についての研究を、怠ってきているのではないでしょうか。