将来の理想像を描く

一倉定先生が口を酸っぱくして仰っていたことが3つあります。
一つが「顧客第一」、もう一つが「環境整備」、そして最後に「経営計画書」です。

「顧客第一」は額面通りに受け取り実行しようとすると、社員がヘトヘトになってしまいます。
また私が知る限り「顧客第一」を掲げている会社は、実態はその正反対で、がめつく「我が社第一」のところが多かったのです。

「顧客第一」というのは間違いがないのですが、「顧客」のところを絞らなければいけないのだということに、だいぶ経ってから気づきました。
自分たちが好きなお客様や、相性のいいお客様や、尊敬できるお客様には心底奉仕できるはずです。
お客様を選び、その方たちに一生懸命奉仕していくというのが、ナチュラルでムリがなく、どうも正解のようなのです。

「環境整備」とは、ひと言で言えば掃除のこと。
一倉定先生と鍵山秀三郎先生は、お互いに接点がなかったと思うのですが、その両方の方から掃除の大切さを教えていただきました。
一倉定先生は何百という会社を見てきて、掃除の行き届いていない会社は業績が悪いことに気がつかれました。
また鍵山秀三郎先生は創業当時から徹底的に掃除をしてこられ、結果、自転車の行商から始めた会社は、一部上場会社にまでになりました。

「経営計画書」を書く大切さはよく分かるのですが、ともすればルーティンワークに流されて、なかなか書けないのが現状ではないでしょうか。
夢は書けば実現する確率が圧倒的に高くなるというのは、私自身の経験でもあります。
経営計画書も言ってみれば「将来はこうあれかし」という夢の一種だと思います。

「経営計画書を書く」ということは「将来のわが社を作り上げていく」と同じ意味になるのかもしれません。
理想の我が社をまず描き、そのためにはそうすればいいのかを考えるのが経営計画書です。
私の場合は今まで、個人的な目標はほとんど達成できていることが多いのですが、会社の目標は随分と的(まと)が外れることが多かったのです。

ならば会社の目標は棚に上げておいて、まずは個人の夢を遠慮なく書いていくことに集中した方がいいのかもしれません。
小さな会社なので、私自身が潤(うるお)えば必ず会社やスタッフにもプラスになっていくはずだからです。