式年遷宮「遷御の儀」その3

暗闇の中、儀式の様子は見えないものの、粛々と進んでいることだけは分かりました。
私のまわりだけでも数百人の人が、また少し離れたところにも数千人の人たちが座っているはずなのに、聞こえる音は虫の音だけという時間もけっこう長くありました。

神官の方たちは一列に並んで進んでいくのですが、その列が通り過ぎだけでも15分ぐらいかかっていたように思います。
後で知ったのですが、神官は150名ほどもいるとのこと。
古代の装束に身を包んだ神官の人たちが、しずしずと一列になって歩くだけでも、厳かな雰囲気が出ます。

じっと待つことを耐える状態は変わらないのですが、空気が変わり、心地よい風が吹くのを感じた時がありました。
それは神殿の扉が開き、天照大神(あまてらすおおみかみ)が出てこられた瞬間のことだったようです。
天照大神のお人柄のようなものが、そのそよ風から窺(うかが)い知ることができたように思います。

いよいよ遷御の儀の中でもクライマックスとなる神様の移動が執り行われます。
何人もの神官が白い大きな布でご神体を覆(おお)い隠しながら、しずしずと進んでいくのは知っていたのですが、あいにく私の席からはそれがよく見えませんでした。

ご神体の移動に従って、秋篠宮さまを先頭に、参列者数百人もそのあとをついていきました。
旧の本殿から階段を下り、新しい本殿への階段を上がって、そこでまた着席し、最後の儀式が執り行われます。
すべての儀式が完了した時は、正直なところ解放感で心底ホッとしました。
ひたすら待つ1日でもありました。

実際のところ苦しかったのですが、こんな体験は自分からは決してしないと思います。
神様が与えて下さった貴重な体験でもありました。
20年後また式年遷宮に参加したいかと問われれば、やはり参加したいと思います。
私のまわりにいた人たちの平均年齢は75歳ぐらいではないかという気がします。
次回私は80歳。
本当はその次(100歳)も密かに目指しておるのであります。