心のバリア

1954年、イギリス・オックスフォードの陸上トラックで、25歳の医学生ロジャー・バニスターが、1マイル(1.61キロ)を4分以内で走り切りました。
これは当時誰もが達成不可能と信じていた記録なのです。
3分59秒4.

陸上選手としては全くの素人だったバニスターですが、必ず4分が切れるはずだと信じ、そのための練習方法も自分で考え出し、トレーニングしてきたのです。
「基本的にはこれは肉体の問題ではなく、『1マイル4分は切れるわけがない』という思い込みを断ち切る気持ちの問題だ」とバニスターは捉(とら)えていました。
バニスターの「信じる力」は見事に果実を実らせたわけです。
すると今まで1マイル4分を切れなかった、ほかのプロの選手たちが次々と4分を切り出しました。

ということは、すべての一流選手が「思い込み」に縛られていたということなのです。
その時の思い込みを、 “four-minute barrier”と呼んでいます。
これは有名な「事件」なのです。
1999年には世界記録は3分43秒13にまで縮(ちぢ)みました。
ちなみにバニスター自身は、1マイル4分を始めて切った記録よりも、そのあと40年間、神経科の医師として地道に働いてきたことの方が、自分にとっては大きな意味を持っていると考えていたようです。

私たちの仕事でも人生でも、心のバリアを知らず知らず持っていることがあるに違いありません。
私の最近の例で言うと「ビジネスマンにとって読書量は月に60冊。それ以上は読めないし、読んではいけない」というバリア。
私と同世代の人(詳しく言うと3つ年下の人)が10万冊の本を読み、400冊の本を書いたことを知り、私の心の内にあった、この「読書バリア」は、あっさりと崩れ去りました。
何の条件も変わらないのに、以降、月に84冊(年に1,000冊)を超える本が読めるようになりました。
今まで自分で自分の力を束縛していたとしか思えません。

この際、なくしてしまおうと思っているバリアがもう一つ。
「年に1億円以上の利益は上がらないし、上げてはいけない」。
どうしてそんなことを思い込んでいるのかは、よく分からないのですが、じっと自分の心の底を観察してみると、たしかにそのような心のバリアを持っているのです。
不思議だけど、事実。
そうと気がついたからには、その束縛を取り去ってしまいたいと思います。
そして成功した暁には、何も自分だけが繁栄するのではなく、そのコツをまわりにも伝授していけばいいわけです。
心のバリアが外(はず)れ、その効果、つまり次期決算書が楽しみです。