古い業態が時代の最先端に

『○○食堂』と言う名前のお店が、幹線道路沿いに新しく出来ました。
横文字の名前ではなく、まさしく「○○食堂」。
それも独特の書体で書かれていました。
入ると新築の木の匂いがします。
カフェテリア方式のように、ずらりと“おかず”が並んでおり、好きなものを取りながら進んでいくわけです。

和食の家庭料理の一品がいっぱい。
逆に普通のレストランでは食べられないようなもの(例えば小魚や梅干)も、たくさんのお皿の中から選んでいけるので、うれしくなってしまいます。
最後に「小・中・大」のいずれかのご飯を“よそって”もらい、あとは精算へ。

私のようなイラチは、入ってすぐに食べられるのが何よりです。
注文してから待たなくてもいいわけです。
しかも牛丼のような単品ではないので飽きずに、けっこう毎日利用しようと思ったら出来そうです。
大体一人当たりの単価は700円。
満足度から言えば、ものすごく安い価格だと思います。

早いし(最初から出来ている)、きれいだし、お値打ちだし、いっぺんにファンになってしまいました。
今のところ、宝塚にあるレストランや食堂の中では一番気に入っています。
以前に、名前を言えば誰でも知っている、ある外食チェーンのレストランに入りましたが、出てくるのが遅いし、不味(まず)いし、しかも高い。
満足できて高いのなら全然問題ありませんが、そうでないと「このレストラン・チェーンには2度と来ないだろうな」と思うわけです。

『○○食堂』に入っているお客さんを見ていると、工事現場で働く人たちや近くの職場のサラリーマンのグループと言うのは想定内ですが、意外に近所のお年寄りのグループが多いのに驚きました。
家で一人で食べるよりも、仲間と一緒の方が楽しいわけです。
この顧客層は固定的な売上げに寄与しそうです。

店内には昭和の初め頃にあったような、古びた食堂の写真が貼ってありました。
その店の前で撮った店主の家族の白黒写真も。
たぶんこの『○○食堂』チェーンの創業者(社長)の父親がやっていたお店なのでしょう。
同じような形態の食堂なのに、ここまで進化させていることに、大きな驚きと賞賛を持たずにはおられませんでした。
消え去る運命にあるような業態でも、やり方によっては見事に時代の主役になってしまうのですね。

当たり前のようにやっている『○○食堂』ですが、そこにはノウハウが凝縮されているように思います。
味も当然そうですが、前金での精算やウェイトレスが一人もいない方式。
看板の大きさや明るさや独特の字体。
充実した駐車場や店舗レイアウト。
繁盛するお店はノウハウがいっぱい詰まっていて、そのノウハウを2店目以降に応用するから、スケールメリットまで享受できてしまうのでしょう。
食事を食べに行って、こんなに勉強になることはありません。
ついでに“おなか”もいっぱいになりました。