経営地獄からの脱却

手広く飲食業を営んでいた父親が69歳で急性し、事業を引き継いだ人の本を読みました。

本人は大企業のエリートサラリーマンで、一生そこに勤めるつもりで、家業を引き継ぐ気持ちは全くありませんでした。

ところが葬儀のあと、あまりに会社が混乱しているので、2週間だけ手伝って整理をつけることになりました。

その2週間が終わるころ、いつの間にか従業員たちからは「社長」と呼ばれており、また借入れが40億円もあることが分かり、抜き差しならない状態になってしまいました(連帯保証人の母親に負担がかかり過ぎるため)。

そこからが地獄の始まりとなるわけです。

まずはバブルの時に買った不動産の不良資産を処分し、例えば11億円で購入したビルを1億数千万で売却しました。

またカラオケやサウナなどの不採算部門を閉鎖し、居酒屋一本に絞りました。

途中、従業員の不祥事や、お店の火事など、さまざまな地獄を見た挙句、16年かかって借金をすべて返したそうです。

私もバブル崩壊で死ぬ思いをした経験があるので、身につまされながら読みました。

それから3年ほど経ち、最近、新しい展開があったことを知りました。

将来の事業承継のことを考え、息子たちに声をかけたところ「絶対に引き継がない」とのこと。

親の苦労を散々見てきているので、それはそうかもしれません。

また従業員から社長を選ぼうとしたのですが、従業員には負担が大きすぎて、候補者が次々と退社してしまう羽目になりました。

仕方がないので、M&Aで売却する決断をしました。

居酒屋は13店舗あるのですが、3店舗だけ手元に残して、あとの10店舗はすべて同じ会社に譲渡。

なぜ3店舗だけ残したかと言うと、その規模であれば自分で無理せずに経営できるのと、万一、元の従業員が譲渡先でうまく適応できない場合の避難所を残しておきたかったからだそうです。