シンプル経営

長い間会社を経営していると、途中さまざまなことが起こります。
「まさか」のピンチもあるし、長い低迷期に入ってしまうこともあります。
経営者の気持ちがずっと前向きだったらいいのですが、落ち込みからなかなか抜け切れないことも少なくないし、時にはポキンと折れてしまうこともあります。

会社経営が上手く行ったら行ったで、すぐに慢心するようになります。
驕(おご)り出すと、態度が“ぞんざい”になります。
一番わかりやすい例が時間に遅れ出すこと。
社員でも時間に遅れ出すと、近いうちに必ず事故か事件を起こします。
ましてや経営者が時間にルーズになると、すぐそこに経営危機が待っているのです。

戦国武将を研究している人が「飛ぶ鳥を落とす勢いだった武将が没落していく原因は、すべて慢心だった」とのことを書いていました。
驕り高ぶると、自分を客観的に見ることが出来ません。
神仏への信仰があったり、メンターがいたり、古典や歴史に造詣が深かったり、身近に指摘してくれる人がいたりすると、かなりの確率で慢心による心の歪みを直してもらえるように思います。

経営の敵は「驕り、油断、飽き」に尽きると思うのです。
大勝ちすると“ついつい”思い上がります。
大ヒット商品を飛ばした後や、バブルで大儲けした後に会社が倒産するのは、すべてこのパターン。
油断も驕りと密接につながっています。

立派な本社が完成した後に経営危機に陥るケースを何度も見てきましたが、これなども驕りと油断の両方が原因に違いありません。
「立派な本社が完成したあとに経営危機が来る」というのは一種の法則のようなもので、本社完成で浮かれていてはいけないのです。
例え銀行であっても、この法則が見事に当てはまっていた事例を私はいくつも知っています。

人生には「上り坂」、「下り坂」、そして「まさか」の3つの「さか」があると言われますが、会社経営でも全く同じ。
しかし普段から損益分岐点を低くしていたり、借入金をゼロにする努力をしていたりしたら「まさか」に対する抵抗力が強くなります。
航海中に突然の横波が来ても転覆しにくいのです。
バランスが悪いと、何かあった時に持たないのです。

常に「整理・整頓・清掃」をして会社のバランスをよくしたいと思うのです。
また出来るだけシンプル経営で行こうと思うのです。
もっと言えば、自社の得意分野に特化したシンプル経営しか生き残る道はないとも思っています。