新しい需要の創出

ドラッカーによると、企業活動の目的は「顧客の創造」とのこと。
ついつい「利益の確保」かと思ってしまうのですが、そうすると企業の本質や使命から外れてしまいやすくなるのでしょう。
企業もしくは会社というのは、資本主義の中核をなす組織です。
資本主義が発達する以前に存在した組織は「軍隊」や「教会」など。
これらの組織には顧客という観点が全くありませんでした。
これに対し、企業や会社は「顧客」が存在しないと成り立たないのです。

「顧客の創造」は「需要の創出」と言い換えてもいいかもしれません。
例えば宅急便が存在するまでは、不便な鉄道便しかありませんでした。
今ではいくつかの宅配便会社によって、信じられないぐらい便利なサービスが競って行われています。
宅急便が出来たからこそ生まれた荷物やサービスや産業もあるわけです。
早い話がネット販売だって、宅配便がなければどうしようもないビジネスです。

ふつうは需要を満たすために、世の中の供給力が充実していきます。
一方、新しい商品やサービスや施設が出現したことにより、新しい需要が創出されることがあるのです。
それこそがシュンペーターが言う「新結合(neue Kombination)」でないかと思うのです。
宅急便や携帯電話も「需要の創出」商品だし、パソコンに代表されるITに至っては需要の創出どころか、仕事革命や生活革命まで起こしてしまいました。

仮に株や商品取引で何百億円と大儲けしたとしても、それ自体の社会的付加価値はほとんどゼロです。
それに比べ世の中を便利で豊かにしていく商品の開発は、この世的に大きな価値を生み出します。
神さまだって、そちらの方を大きく評価されるはずです。
需要の創出こそ企業家の「この世とあの世をつなぐ」勲章なのだと思います。

世の中を変えるほどのものでなくても、ちいさな「需要の創出」現象はいたるところで見られます。
例えば全く新しいシティホテルができ、それ自体が新しい顧客を創造していくことがあります。
あるいはまた大きなコインパーキングが出現し、あっという間に毎日そのコインパーキングが満車になることもあります。
「これらのクルマは一体今までどこに停めていたのだ?」と不思議に思うことも度々(たびたび)です。
例え小さな会社であっても「需要の創出」を目指した活動をしていきたいものです。