実需があってこそ

政策目標で「脱デフレ」や「インフレ目標」などという言葉を平気で使っていることが多いのですが、何か違和感があるのです。
デフレと不況は状況がよく似ていますが、同じではありません。
「インフレ・デフレ」は通貨とモノのバランスの話で「好況・不況」は経済の活性化の問題です。

長谷川慶太郎さんによると「平和はデフレ、戦争はインフレ」。
つまり戦争がないと基本的に経済はデフレの方向に向かい、戦争があると途端にインフレ基調となります。
戦争があると武器弾薬を始めモノが大量に消費され、また破壊によってモノがなくなっていきます。
労働力も不足し、生産に支障をきたし、モノが市場で不足がちになります。
モノが少なくなると、モノの値段が上がりインフレということになります。

本気でインフレを目指すならば、戦争をするのが一番手っ取り早いのですが、国民の幸福を考えるならば、それは最悪の選択となります。
従って「インフレ・デフレ」は目標にすべきことではないように思うのです。

日本は30兆円のデフレギャップがあると言われています。
つまり供給に対して需要が30兆円足らないのです。
実需をどう30兆円増やしていくかが問題であって、これに知恵を絞らなければならないわけです。
日本は個人消費GDPの60%を占めていますが、これをいかに活性化させるかなのです。
消費を増やさなければならない時に、消費税を増税して消費を抑制しようとするのは狂気の沙汰のように思えるのですが、いかがでしょう?

GDPは「個人消費」と「企業投資」と「政府支出」の総計です(それにプラス「輸出」マイナス「輸入」)。
実需のためには大規模な公共投資も有効です。
幸か不幸か、今は震災復興という絶好の課題があるわけですから、誰に遠慮することもいらずチャンスなのです。
公共投資の財源は、相続税所得税の減税の特典が付いた国債を「長期・低金利」で発行すれば、けっこう売れ、返済への負担も少なくてすむのではないでしょうか。

景気対策のために、通貨をバンバン刷るのは、一時期はカンフル剤にはなるかもしれません。
が、実需を考えずに、単に通貨を大量発行するのは、やがて経済に歪(ひずみ)をもたらす危険な政策という気がするのです。