今後の世界情勢

今の日本経済が悪いかと言えば、そう悪くもないのではないかと感じるのです。
失業率だって5%ぐらいなので、欧米と比べればかなり良いわけです。
円高であることは間違いがないのですが、輸出企業にとっては具合が悪くても、日本全体でみた場合、中立、もしくはメリットの方が大きいかもしれません。

1989年というのは実に歴史的な転換期であって、その年を機に経済がインフレからデフレに変わっています。
政治的にも天安門事件(6月4日)やベルリンの壁崩壊(11月9日)などが起こっており、それぞれ、その後の動きを意味する象徴的な大事件でした。
前者は「中国共産党の非民主化宣言」を意味し、後者は「冷戦の終焉」を意味します。

1989年から日本経済はずっと下り坂で「失われた20年」と称されるわけですが、一つは人々がデフレに慣れていなかったという側面もあるのではないでしょうか。
不良債権に対する金融機関の対応も、当初は不慣れで、どうやったらいいのか分からないところがあったのですが、最近は債務者、債権者共に随分慣れてきたという印象があります。

金融円滑化法が2013年3月で切れ、今現在ある「潜在的不良資産」も2013年後半から市場に顕在化して出てくることになると思われます。
市場に物件が増えるわけですから、不動産価格は一段と下がるはずです。
ただし逆に不動産取引は活発化することが考えられます。
言ってみれば、いい物件を取得するチャンスでもあるわけで、財務体質を改善し、キャッシュポジションを高めておくことが肝要だと思っています。

欧州危機は構造的に日本のバブル崩壊と全く同じで、やはり欧州も「失われた20年」を経験する必要があるのだと思います。
それにしてもギリシャやスペインのように失業率25%(若者に限れば50%)というのは、さすがに日本のバブル崩壊でもあり得なかった数字で、いかに厳しい状況かが推測できます。

中国の人民解放軍は、あくまでも中国共産党の手勢であって、中国という国家の軍隊ではないのです。
その人民解放軍に対するシビリアンコントロールが、効いていないのではないかという現象がいくつか見られます。
中国は7つの軍区に分かれています。
特に瀋陽軍区は長い国境線を抱えているので、その力が抜きん出て強いと言われています。
それが北朝鮮問題で、北京政府の指示に従わないという事態に陥ると、瀋陽軍による北京制圧も考えられ、その場合は内戦状態になるリスクが大きいのです。

中国各地で暴動や騒乱が起こっていることは、よく見聞きすることですが、民衆だけでは国がひっくり返るような「革命的」な動きにまで発展しないかもしれませんが、軍が反旗を翻すとなると話は別です。
景気悪化と物価上昇は、経済対応の処方箋が全く違うのですが、それに加えて軍をなだめるという仕事が政府に加わるとしたら、そのかじ取りはかなり難しいと言わざるを得ません。
ひょっとしたらコントロール不可能かもしれないという気もするのです。