人・本・旅

人間の器を大きくしてくれるものに「人」と「本」と「旅」とがあります。
「人」との出会いは、なかなか意図しては難しく、良い友や良い師との出会いは神様の計(はか)らいに違いありません。
ただし、自分が相手に対して「いい友」や「いい師」になることを目指すことは、自分の意志でできるわけです。

今の私は交際範囲を絞ろうとしているのですが「仕事ができて性格のいい友人たち」との接点は絶やさないようにしたいと思っています。
そのためには美味しいレストランで一緒に食事をするのが一番です。
むろん自分よりも若い人たちの場合は、食事代は私が持つのですが、ちょっと「友情をカネで買う」感じがしないでもありません。

「本」は比較的経費が安くすむのですが、その割には見返りが大きく、世の中にこれほど投資効率がいいものも少ないのではないかと思います。
1冊読めば1冊分賢くなっているのは間違いがなく、逆に本を1冊も読まないとアホになるのです。
1冊1冊の積み重ねは実に大きく、この積み重ねが人生の成否を決めてしまうのではないかとすら、今これを書いていて気がつきました。

仕事や経済や家庭や健康や交際や趣味など、あらゆる面でバランスよく合格点を導き出していくのは、案外難しいのです。
「仕事がデキる」というのと「経済的に恵まれる」というのは微妙に違っていて、仕事がデキるのに資金繰りに四苦八苦している人もいます。
あるいは仕事はダントツにできるのに、健康面や家庭面で問題を抱えている人も少なくありません。

読書家は物事を客観的に見ることができ、いろんなケースに冷静に対応することができます。
また不思議なことに、本を読んでいるとバランスの取れた人生になっていくのです。
本はその人の性格まで変えていき、読書家で「すぐキレる」人を見つけるのは困難です。
読書を通して身につけた人格は、結構レベルが高いのです。

「旅」もまた人を磨きます。
特に海外への一人旅をすると、行く前の自分と、帰った後の自分が違っているのがわかります。
明らかに成長しているのです。
個人旅行はパッケージツアーの3倍有意義です。
また同じ個人旅行でも語学ができると、そのまた3倍充実してきます。
これはフランス語を始めてからパリに行ったときに痛感しました。
まだ覚束(おぼつか)ないフランス語だったのに、旅の充実化にガツンと手ごたえがあったからです。