思い込み」から自由になる その2

知人の経営者が「S塾で『売上げ目標を○○億円に上方修正すべきだ』との指導を受けた」と言っていました。
本人もその気で、その目標に対して「やる気」満々なので、それはそれでいいと思うのですが、私自身は「売上げ目標」に対してはあまり興味がわきません。

昔、ある勉強会で「君は社員100人の会社を目指すべきだ。君はいいものを持っているので、君ならできる」などと、そこの塾長におだてられ(塾長も悪意があって仰ったわけではないのは重々承知していますが)、バブルが近づいてきた時期だったし、私も30歳代前半だったので、すっかりその気になってしまったことがあります。
結論から言うと、その目標は会社を間違った方向に向けてしまいました。

私もバブル崩壊で散々な目に合った一人ですが、反省点を挙げるとするなら「社員数を増やしすぎた」に尽きるのではないかと思います。
バブル後半になると不動産市場での供給量が極端に減り、仲介だけでは食べていけなくなりました。
自分一人で商売をやっているのなら休んで様子を窺(うかが)っていたらいいだけですが、社員が大勢いるとそういうわけにはいかないのです。

社員の給料を出すためにも、不動産の買取りに走らざるを得ませんでした。
結局それが大失敗の根本原因で、買取った不動産が売れず、塗炭の苦しみを味わいました。
会社が大きいと「ネームバリューがある」や「採用がしやすい」などのメリットがありますが、世の中の変化に対して機敏に変化できないというデメリットがあります。

一度膨張した会社をコンパクトにするには、得意でない業務を外しながら凝縮(ぎょうしゅく)していかなければなりません。
そのとき必ず「自社のコアは一体何なのか?」の課題と向き合わなければならないのです。
小さな会社だと損益分岐点が低いので、そんなにガツガツしなくても食べていきやすいわけです。
そのメリットを最大限に活かして、じっくりと考える時間を持ち、自社の将来像をイメージすべきなのです。

私自身の体験ですが、会社を小さくした方が「より安定した収益」と「より大きい利益」を得やすくなったように思います。
小さな会社だと、人の管理にかかるコストも手間もいらず、報連相も同じスペースにいるだけでできてしまいます。
B/Sを軽くしてしまえば、有利子負債も減少するはずです(当社はゼロになりました)。

お客様にとっては自分が関与している会社が大きくなろうが小さくなろうが関係のない話で、いかに自分にとってメリットある商品やサービスが提供されるかだけが関心事なのです。
資金繰りにアタフタすることなく、会社本来の使命である良い商品やサービスの提供に経営資源を集中したいと思うのです。