猿田彦大神 その2

畏れ多くも神話にはちょっと”ややこしい”ところがあり、一度ぐらい読んでも何が何だ分からないことが少なくありません。
第一、神様のお名前を覚えるだけでも大変なのです。
せっかく猿田彦神社を訪れたので、私の知識の範囲で古事記の世界を説明してみます。

イザナギにはアマテラス、ツクヨミスサノオという3人の子供がいました。
アマテラスは太陽の神、女性です。
ツクヨミは月の神、しかし意外なことに男性です。
スサノオは神様なのに乱暴者で、だいぶ悪さもしたので、高天原から追放されてしまいました。
けれども地上に降りてからはヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治するなど、英雄でもありました。

アマテラスは孫のニニギノミコト瓊瓊杵尊)をつかわして(これを天孫降臨と言います)、地上を治めさせようとします。
そのときに持たせたのが稲穂。
コメは単に穀物の一つではなく、日本および日本人にとって霊的に重要な意味を持っているのかもしれません。

この天孫降臨の時にニニギノミコトと行動を共にした神々が5柱おります。
神様を数える時は「柱(はしら)」という数詞を使うのです(ちなみにこの文章の中では神様に敬語を使っておらず、心苦しく思っております)。  
天児屋命(あめのこやねのみこと)や天宇受売命(あめのうずめのみこと)もその中の2柱でした。

天児屋命の子孫が藤原氏なのです。
天児屋命の役割は祭司でありました。
後世、藤原氏が権勢をほしいままにし、その実力が天皇家を凌(しの)ぐようになっても、自分たちが天皇家に取って代わろうとは決してしませんでした。
その理由は、自分たちの先祖が天皇家の先祖の家来として付き従ってきたという記述が、古事記の中にハッキリと記されているからです。

天宇受売命(あめのうずめのみこと)というのは女性の神様です。
アマテラスが天の岩屋に隠れた時、その前で面白おかしく踊りを披露し、それを見た神々がどっと笑ったので、アマテラスが何事かと岩屋を開けました。
アメノウズメは”ふくよか”で心が広く、魅力的な女性(女神)であったに違いありません。

ニニギノミコトが地上に降り来る時に、道案内したのがサルタヒコ。
アメノウズメは後に猿田彦(サルタヒコ)と結ばれました。
天宇受売命は天津神猿田彦大神国津神だと思われます。

ふつう神社は南に向いて建っているのですが、猿田彦神社ではサルタヒコとアメノウズメの神社が向かい合っています。
つまりアメノウズメの神社である佐瑠女(さるめ)神社は北に向いて立っているわけです。
これは神社としては非常に珍しいケースだと思います。