新しい時代への胎動

「今の不況がいつ終わる?」ということに関心があるわけですが、単に元の経済状態に戻るだけではないような気もします。
今までの資本主義から、新しい時代に向かっての胎動。
その胎動の苦しさが今の世界同時不況なのかもしれません。

社会主義はごく一部の国を除いて崩壊しました。
中国は政治的には共産党一党独裁ですが、経済的には日本以上の資本主義。
1917年にロシア革命が起こり、1922年にソビエト連邦が成立。
そして1991年12月25日のソ連の崩壊まで社会主義の壮大な「実験」が行われたわけですが、完全な失敗に終わりました。
単に経済的な破滅だけでなく、人々の自由を奪い、経済のダイナミズムをなくし、人間の尊厳を踏みにじって来たように思います。
いずれにせよ社会主義は過去の遺物、もしくは消え去る運命にあることは間違いがありません。

では資本主義はそのままの形で生き残れるのかといえば、これもまた疑問。
最先端の金融工学が世界を不幸に陥(おちい)らせました。
この世界同時不況が終わったら、今までの形に戻るのではなく、新しい資本主義が登場すると思うのです。
ではどんな資本主義か?
勝手に名前をつけるなら「共生資本主義」。

例えばリナックス
フィンランド人のリーナス・トーバルス氏が学生時代に開発したコンピュータOSですが、無料で世界に公開し、それをまた世界中のIT技能者がボランティアで改良を加えていっています。
使用するのもフリー(無料)。
一社独占を目指すマイクロソフトとは対極をなしています。
今までの資本主義では考えられないことでもあります。
いわばリナックスは世界人の共作。
人類の宝と言っても大袈裟ではないと思うのです。

歴史はアウフヘーベンして進化していくというのはヘーゲルの理論ですが、要するに螺旋(らせん)階段のように歴史が動いていくわけです。
見方によっては、一直線に進化しているように見えるし、あるいは左右の両極に動いているように見えるかもしれません。
しかし同じ位置に戻ってきたように見えても、それは以前より一段高い場所なのです。

本来の資本主義は勤勉、節制、利他の精神がその根底に流れていました。
プロテスタンティズムのいい面が資本主義を発展させてきたのです。
それがいつの間にか強欲資本主義となり「自分だけが大儲けすればそれでいい」の精神に毒されてしまいました。
それがまた「共生主義」ともいうべき新しい考え方の資本主義に変化しようとしているのです。
元の資本主義に戻るように見えながら、実はより進化した資本主義。
今の胎動の苦しみから、新しい時代が生み出されようとしているのだと思います。
それが何だか具体的には私にも分からないのですが、日本が古来から有する価値観に世界が集約していくような気がしているのです。