時を守り、場を清め、礼を尽くす

「時を守り、場を清め、礼を尽くす」というのは、森信三先生の言葉です。
森先生の言葉の中で一番好きな言葉でもあります。
「時を守る」はビジネスの基本の基本。
時間にルーズな国や組織や人は信頼できないのです。
世界を見渡しても、時間にキチンとしたところほど、経済が発展しています。

「遅刻するセールスマンから買ってはいけない」は、私の経験則でもあります。
遅刻してきたセールスマンから買った時は、今までロクなことがありませんでした。
特に高額な商品や不動産の場合は、具合の悪いものを買ってしまうと、経済的にも精神的にも、後々かなり厳しいものがあります。
セールスマンが遅刻する時は、天が「買ってはいけない」と警告を与えてくれているのだと思います。

「場を清める」は自分のまわりをキレイにすること。
掃除をするということでもあります。
「道具をていねいに扱う」も「場を清める」に含まれるかもしれません。
イチローが野球道具をていねいに扱うというのは有名な話。
道具を粗末に扱う人は一流には決してなれないのです。
道具をていねいに扱い、打席に入ってから打撃までに決まった形がある。
茶道の奥義にも通じた精神を感じます。

世界一の脳外科医と言われる福島孝徳さんは、徹底的に道具にこだわります。
福島オリジナルと言われる何百種類もの道具を自由自在に扱ってこそ、難手術を次々と成功させていくことが出来るのでしょう。
鍵山秀三郎先生も掃除の道具をけっして粗末には扱いません。
時には自ら掃除の道具を考案されることすらあります。
また掃除道具はそれ自体が、キチンと整理整頓されていなければなりません。
箒(ほうき)の状態を見ただけで、その会社のレベルが分かります。

靴をピカピカに磨きだしたのは、比較的最近のことなのですが、足元がキレイだと心まで快適です。
何か自分に自信が出てくるから不思議です。
車だっていつもキレイにしておこうと思います。
自分のまわりのものを常に整えキレイにしておくと、なぜか自分への信頼感が増してくるのです。

「礼を尽くす」は日本神道の真髄です。
まず神様への礼を尽くす。
日本神道には「教え」の部分がほとんどなく、わずかに「二礼、二拍手、一礼」という形が連綿として伝えられているだけです。
「二礼、二拍手、一礼」の作法の合間に、自分の願いを言えるわけでもなく、そこにあるのは神様への「礼」のみ。

神様への「礼」は信仰。
人と人との「礼」の本質は「距離感」。
うまく距離感を取っていくのが「礼」なのです。
英語でも動詞を過去形にすると「ていねい語」になります。
例えば、Could you 〜や Would you 〜など。
過去形の意味するものは「距離感」。
その距離感がていねいさを生むわけです。