アメリカの保守本流

アメリカの混迷』(草野徹PHP研究所・1,200円)の冒頭に出てくる文章です。
「リベラルの男が1980年代を回顧していた。
『あのレーガンのバカがソ連を「悪の帝国」と呼んだとき、戦争が近いと感じた。
あのレーガンのバカが軍拡に向かったとき、地球が核で全滅する公算大と思った。
あのレーガンのバカが、ソ連が米国に追いつこうとすれば破産すると見込んでスターウォーズ計画を発表したときは、彼を危険な変人と見なした。
ソ連が解体し、帝国は崩壊し、冷戦も終わったとき、すべては天才ゴルバチョフのおかげで、レーガンの貢献はゼロと考えた。
あのレーガンのバカがずっと正しかったのなら、この私こそとんでもないバカということになるが…』」

アメリカの共和党保守本流路線ですが、リベラルな民主党よりも、日本との相性はずっといいようです。
共和党の大統領が登場すると日本との関係がよくなり、民主党の大統領だとアンチ日本となる経験則があります。
共和党の大統領が選出される方が、日本の国益には適(かな)っているようです。

アメリカはベトナム戦争で惨めな敗戦を経験しました。
アメリカは戦争において、常に「敵国」と「世論」の両方と戦わなければならない宿命を持っています。
アメリカのベトナム撤退を早めたのは「テト交戦」ですが、これなど戦闘的にはアメリカが勝っているのです。
北ベトナム側の犠牲の方が圧倒的に大きかったのですが、アメリカ国内での厭戦気分と反戦運動が高まり、遂にはベトナムを見捨てる形での終戦となりました。

結果として北ベトナム南ベトナムを統合し、今のベトナム共和国となったわけですが、もし南ベトナムの方が勝利していたならば、もっと自由で、もっと民主的で、もっと繁栄したベトナムになっていたと思います。
これは以前にハノイに行った時、ハッキリと体感したことでもあります。
ハノイは経済的には日本より50年遅れ、社会主義的な官僚主義が根付き、しかも汚職や不正が蔓延している。
一方サイゴンに行った時には、これが同じ国かと思うほど、街が発展していました。

ベトナム戦争の当時、世界中からアメリカは非難されていました。
しかし長い目で見た場合、共産軍が勝利を収めるよりは、アメリカが勝っていたほうが、ベトナム国民はよほど豊かで恵まれた生活をしていたのではないかと推測されます。
ただ如何せん、南ベトナム政府の高官はあまりにも腐敗していました。
北ベトナムにはホーチミンという優れた人物がおり、このリーダーの差が決定的であったことだけは間違いがありません。