引き算の美学

日本文化のエッセンスは「引き算」の魅力。
足していくのではなく、余分なものをそぎ落としていく文化。
茶道でも究極のシンプルさの中に無限の美を追求していきます。
「わび・さび」も引き算から来る美学だと思います。

日本の神様の中で最高位に位置する天照大神(あまてらすおおみかみ)のお社(やしろ)は、その権威ある神格に比べ、いたって質素。
カトリックの総本山とも言うべきサンピエトロ寺院と比べても、あるいは強力な王権で作り上げたヴェルサイユ宮殿と比べても、実にシンプル。
しかしそのシンプルさの中に、日本人は奥深い美しさを見出してきました。
しかも式年遷宮と言って、その建物を20年に一度建て直すのです。
こんな発想がほかの民族にあるでしょうか?

個人の生活もシンプルライフでいきたいものです。
ほんとうに大切なものと、どちらでもいいもの。
どちらでもいいことに、時間を無駄に費やしたくないのです。
限られた時間の中、何をすべきで何をすべきでないのか。
けっして大上段に構えるつもりはないのですが、神々が喜ばれること、世の人々が幸せになることに心していきたいのです。
子供が無邪気に遊びに没頭するように、やりたいことに集中。
それがそのまま大道につながるような生き方であれば、こんなに有難く幸せなことはありません。

圧倒的な仕事量をこなすためには、まずはその時間を確保する努力を。
ウダウダと道草ばかり食っていたのでは、圧倒的な仕事量はおぼつかない。
細切れの時間は細切れなりに使っていく手はあるのですが、やっぱりまとまった時間はどうしても必要です。
自分の今の生活を見ても、つまらないことに時間を取られすぎて、ひと仕事できる時間をどんどん削ってしまっています。
反省です。

時間を作り出す方法がほかにもあります。
仕事を人に任せてしまうことです。
今まで自分が能力的に一番よく出来るからと、何でもかんでも自分でこなそうとしていました。
これでは時間がいくらあっても足りないし、実際のところ社員に任せた方が、私などよりずっと上手くこなしてしまうことが多くなりました。

自分にしか出来ないことに特化すべきです。
自分にしか出来ないこと…その一つが「決断」。
大事な決断を社員に任せるのは逃避以外の何物でもありません。
20パーセントの時間が80パーセントの仕事をこなしている。
ここでも「パレートの法則(20対80の法則とも言います)」が働いています。
ならばパワーを持った20パーセントの時間は自分が集中。
後の80パーセントの時間は社員に任せてしまえばいいわけです。

一倉定先生は、社長には秘書と運転手が必要とおっしゃっていました。
今その意味がやっと分かってきました。
社長はより高度な仕事をしていかねばならないのです。
では掃除は人に任せればいいのか?
これはノー。
掃除のような高度で大切なものを、人に任せてしまうわけにはいかないのです。
掃除を始めて17年目にしてやっと分かったのですが、例えばトイレ掃除で便器をきれいにすると、会社全体がいいオーラに包まれてくるのですね。
それは神様の協力が得られる波動でもあるのです。
こんな大切な仕事は、やっぱり社長の仕事だと思うのです。
天皇陛下の最大のお仕事が「祈り」であるのと同じです。

とまあ、いろいろ書いたのですが、要は生活を極力シンプルにし、本当に大切なもの(私は「人生の本筋」と呼んでいます)に集中していく。
そして圧倒的な仕事量!
圧倒的な仕事量の前には、少々の不都合はぶっ飛んで行きます。
汗をかいて、知恵を絞って、さあ共に頑張っていきましょう!