発音できないのだ

ドイツ語の時間に糟汁(かすじる)の話題が出た時、ツァイトラー先生は「かす“しる”」としか発音できないことを発見しました。
「しる」と「じる」との区別がつかず、どうも同じに聞こえるようなのです。
「しる」と「じる」の発音の違いが分からない日本人なんていません。
「民族によって発音できない言葉があるのだなぁ」と改めて納得しました。

日本人が苦手とされる「L」と「R」の発音。
私は自分が言うときは、なんとか発音できているようなのですが、ネイティブが発音した時は、その区別は全くつきません。
「L」の時は舌を上の歯につけ、「R」の時は舌をどこにもつけない。
じゃあ日本語の「ラリルレロ」はというと、舌を上の歯につけるのですが、その時に弾(はじ)いて音を出すのです。
気持ち的には「R」と「L」の中間の音が出ているらしい…。
ドイツ人のローターさんは「『R』と『L』の音は全然違う音。これが同じに聞こえる方が不思議」と言っていました。

フランス語には「H」の発音がないそうです。
どうりで”HERMES”は「ヘルメス」ではなく「エルメス」なのですね。
フランス人にとっては日本語の「市役所」と「百姓」の発音上の区別は至難の技に違いありません。

中国語には濁音がありません。
たとえば「だ」を発音したい時は「た」を強く言う方法を取ります。
標準中国語(北京語)は四声(しせい)といって、一つの語に4つの発音の仕方があり、それによって意味が違ってきます。
ところが北京語以外の中国語では6つも発音の仕方があるのがあるらしいのです(ベトナム語も六声)。
「六声なんてやってられるかぁ!」と思った人間の一人がジンギスカンでした。
だから4つの発音しかない北京語を標準中国語に定めたのだとか。
これは北京語を母語とする大連出身の中国人留学生から教わった話です。