世界のカネの動き

世界の余った資金が石油にも向かい、石油価格が1バレル100ドルを超えてきました。
ここ5年ほどで5倍ぐらいになっています。
5年で5倍になれば、そりゃあ、いろんなところに歪(ひずみ)が出てくるはずです。
むろん大儲けしているところもあるわけです。

石油は今や金融商品と言っていいのかもしれません。
産油国の勢いは止(とど)まることを知りません。
長い低迷期を経て、ロシア経済も復活してきました。
プーチン大統領という強いリーダーの出現ともタイミングが合い、大国ロシアへの復興を歩み出しています。

しかし現代生活に欠かせない石油を、投機の対象にしていいものだろうかという素朴な疑問があります。
石油で儲けたお金の使いようがなくて、それが絵画や骨董品の世界へ流れ、価格も急上昇。
あるいはそれがまた石油投資に向かうというわけの分からない状態。
こういう動きは何か間違っているような気がしてなりません。

「神の祝福」された動きではないのです。
アダム・スミス市場経済の需給による絶妙なバランスを「神の見えざる手」と呼びました。ここでは反社会的でない合理的な動き、即ち人類幸福への動きを「神の祝福」と呼びます)
「神の祝福」でない流れは、必ず崩壊すると思うのです。

ドバイをぜひ見ておくべきだという友人がいます。
いかに世界中にカネが余っているかが、ドバイに来るとよく分かるからだと言います。
カネ余りの原因は、たぶん大きな戦争がないからでしょう。
戦争が起これば、たちまちのうちに資金が逼迫していくのではないかと考えています。
余ったカネが、株に向かったり、原材料に行ったり、不動産市場に流れたりしています。
株が下がったと思ったら、石油や金(きん)の価格が上昇しています。

株はいくら値上がりしても困る人はいません。
ひょっとしたら人類が発明したすばらしい投資商品なのかもしれません。
不動産も一般住宅が値上がりするのは困るかもしれませんが、大規模ビルや商用一等地が値上がりするのは、市民生活には何ら問題がありません。
しかし石油や原材料が値上がりするのは、世界の人々の生活にとって困ることなのです。

日本は天然資源に恵まれていないと言いますが、ものすごく恵まれているものが一つあります。
それは水。
世界には水資源に恵まれていないところも多く、また中国のように自ら河川を汚染させ、使えないようにしているところもあります。
案外、この水に恵まれているということが、近い将来大きな武器になりそうな気もしております。
そのためにも日本の水をきれいに守っていかなければと強く思います。

シンガポールなどでは、政府がファンドをこしらえ、その資金を世界に投資しています。
10パーセントぐらいの利回り実績を持っているそうですから立派です。
日本の個人金融資産が1,500兆円とのことなので、10パーセントの利回りだと年150兆円。
政府が上手く運用できるシステムを作れば、もう税金はあまり取る必要がなくなるかもしれません。

シンガポールの国父ともいうべき、元首相のリー・クアンユーが、政府系ファンドの名誉理事長を務めています。
大前研一さんの『大前流心理経済学』(講談社・1,600円)に書いてありました。
リー・クアンユーいわく「中国が目覚めた今、どんなに産業政策に力を入れてもかなわない。しかしシンガポールの人口であるなら、年金資金を世界中の有望企業、有望地域に投資すれば、そのリターンで国民を食わしていくことが出来る。産業政策は首相がやればいい。僕は、国民を食わせるために年金の投資を世界規模でやるのだ!」。
一国のリーダーとはまさにこういう人のことを言うのでしょう。