ベトナム戦争の時、私は高校生だったのですが「アンチ・アメリカ」というのが周辺の雰囲気だったように思います。
世界の世論もそれに近かったのではないでしょうか。
しかし今から思えば、北ベトナムの南ベトナム侵略を食い止める役割をアメリカが担っていたというのがよく分かります。
しかも負けるわけがない戦争でもあったのです。
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ベトナム戦争を分析してみて、南北ベトナムの指導者たちの人間的なレベルの違いが“すべて”であったと結論づけても過言ではないように思うのです。
南ベトナムの腐敗した政府に対し、北にはホーチミンという清廉で傑出したリーダーの存在がありました。
ハノイへ行った時、ホーチミンが住んでいたという家を見学したのですが、実に質素な建物でした。
それに対し、南ベトナムの大統領官邸には映画館まであり、国家経営(政治)に対する姿勢が全然違っていた印象を持ちました。
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ベトナム戦争の帰趨を決定づけたのが、ベトコンによるテト攻勢。
これによりアメリカ国内に厭戦気分が広がり、世論が一挙にベトナム戦争終結へと向かいました。
しかしこれだって戦闘的にはアメリカ軍が勝っていたのです。
アメリカ軍には常に軍事的敵国と、国内世論との両方と闘わなければならない宿命があるのです。
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独裁国家ならば国内の反対勢力など弾圧すればそれまでなのですが、民主主義は一つの方向を打ち出すまでに、時間と手間とコストがかかるのです。
みんなが勝手な主張をくり返すなら、意見がバラバラになり、結論が出なくなるリスクが多分にあるのが民主主義の一面でもあります。
一方、一党独裁の国は、内部で凄(すさ)まじい権力闘争があり、文化大革命などは戦争でもないのに自国民を数千万人も殺す結果になりました。
もどかしくても民主主義の方が独裁主義より100倍ぐらいいのではないでしょうか。