過去の成功体験

国際的に有名な経営コンサルタントのO氏(日本人)の最新版の本を読み「あれっ?」と思いました。
何か縮んでしまった感じなのです。
いつもの未来を切り開いていく、切れ味のいい発想がなく「だからダメなのだ」に終始しているような気がしました。
Oさんの本を読むと、いつもアイデアの斬新さに目を見開かせられ、高揚感すら感じておりました。

過去に偉大な成功体験を持つ、超優秀な人が突如として凡庸になってしまうことが少なからずあります。
晩年の豊臣秀吉がそうでした。
日本史の10本の指に入るような偉人のはずなのに、明らかに老化現象としか見えない頑迷さが前面に出てきます。
太平洋戦争中の山本五十六も最初は名将だったものが、わずかの期間に急に凡庸なリーダーに変身してしまいます。

戦前の「鈴木商店」は、一時期は三井物産三菱商事を凌駕する勢いだったのですが、結局は倒産してしまいました。
大番頭の金子直吉(かねこ・なおきち)が大きく発展させ、金子直吉が潰したと言われています。
ダイエー中内功さんはゼロから日本一のスーパーチェーンを作り上げたわけですが、後半の経営を見る限り、一流の経済人と呼べるのかどうかは疑問です。
ダイエーは中内さんが大きくし、中内さんがダメにしたと言えなくもありません。

優秀な人が最後まで優秀であり続けるとは限らないのです。
特に偉大な成功体験を持つ人は、自分もまわりも「鈍くなった」のに気がつきにくいのです。
ましてや優秀でない人は、よほど慎重に物事を進めていかないと、過去の成功体験が「百害あって一利なし」となりかねません。
特に今のような変化の激しい時代は、よっぽど謙虚に一歩一歩歩んでいくつもりでないと危険なのです。

過去の成功体験が通用しないのは、案外いいことなのかもしれません。
常に「今から」出発できるし、ハンディもありません。
ヒト真似をする必要もないし、自分の頭で考えればいいわけです。
松下幸之助が「本日開業」を唱えたことがあります。
「本日開業」ならば過去の失敗も成功も関係なし。
かえって気が楽になるではないですか。