見切り千両

売上は上がっているのにキャッシュが増えない原因の一つに「売掛金」があります。
売掛金があると資金繰りが苦しくなるのは勿論(もちろん)のこと、取引先の倒産があったりすると途端に焦げ付きが発生します。
結果、黒字倒産が起こることもあります。
この「売掛金」が不動産業ではほとんどありません。

会社にとって最も危険な資金調達法が「手形」です。
会社は赤字では倒産しませんが「手形」が落とせないとあっさり倒産してしまいます。
この「手形」も不動産業では全く使いません。
不動産の取引はすべて現金決済(無論、銀行の口座を利用したりはしますが)。
前回のバブル崩壊で不動産業はガタガタになったのですが、その割には案外倒産が少なかった理由は「手形」を切っていなかったからだと思います。

景気が後退すると、借り入れの多寡が会社の命運を左右します。
やはり借り入れの少ない会社は強いのです。
不動産業では分譲業や賃貸オーナー業だと借り入れは避けられないかもしれませんが、仲介業や管理業だと基本的には借り入れは不要です。
もし仲介業や管理業で多額の借り入れを行っている会社があるとすれば、根本的なところで経営を誤っていると断言できそうです。

製造業でも小売業でも不動産業でも「不良在庫」が発生する時があります。
「いかに不良在庫をなくすか」は「いかに売上を増大させるか」よりもずっと大事かもしれません。
アンテナをしっかり張って不良在庫を出さないようにすることはもちろん大切ですが、万一「不良在庫」が出た場合は「見切り千両」。

過去は過去で処理し、それを未来に引きずらないようにしなければ、いつまでも足かせになります。
見切り千両は執着や拘(こだわ)りを捨て去ることでもあります。
極めて高度な精神作業でもあるのです。
だからこれが出来る人は一流。

先日、本を読んでいたら面白いことが書いてありました。
不良在庫は英語で「デッド・ストック」と言います。
即ち死んだ在庫。
だから不良在庫を処分せずにいつまでも持っていると、そこから死臭が発生し、その匂いがほかの商品にまで移るというのです。
売れ筋の商品まで売れなくなってしまいます。

見切り千両は商品だけにではなく、店舗や事業にも当てはまります。
どうしても黒字にならない店舗や事業だってあるのです。
サントリーのビール事業のように、苦節何十年ののち、突如として大化けする例もないことはないのですが、普通は「見切り千両」の方が正解ではないかと思うのです。
商品や店舗や事業の「見切り千両」も大変なのですが、最も厳しいのが人の不良在庫。

ならば最初から「安易に人を増やさない」。
社員数が多いのが自慢の時代はもう過ぎ去ったのです。
では少ない人数でどうするのか?
ドラッカーの言葉です「アウトソーシングこそ、生産性を高めるための最適の方法」。