バブル経済

たまたま私は不動産業界に席を置いているのですが、案外、不動産市況がバブル崩壊の兆候をいち早く示すのではないかと思っています。
昭和末期の不動産バブル崩壊は1989年の11月から始まっています。
1989年の大納会では、株は日経平均が38,915円と過去最高値をつけました。
バブル崩壊が実はもう起こっているのに、株ですら1カ月以上のタイムラグがあるのです。

証券会社に勤めていた人が書いていたのですが、日経平均が38,915円をつけた日「来年は5万円を突破する!」と上司が確信を持って宣言していたのを、いやにハッキリと覚えているとのことでした。
バブル崩壊はプロでも分からないのです。
バブル崩壊の渦中にいるのに、まだまだ上がると錯覚してしまうのは、プロでも専門家でも同じ。
ましてやテレビに出てくる評論家の話などを真に受けてしまうと、大きく判断を誤ってしまいます。

あの天才ニュートンだって、バブル崩壊に大痛手を負っています。
しかも一度は売り逃げているのに、不動産価格がどんどん上がっているのを見て、途中からもう一度参戦しているのです。
バブル崩壊を見抜き、それに冷静に対応するのは、単に頭がいいだけではムリなのですね。
「地頭(じあたま)」の良さに加え、沈着冷静な判断力が問われるのだと思います。

平成のファンドバブルでは、私は全くの傍観者で、何の利益も損害も受けなかったのですが、昭和最後のバブルでは“いっぱし”のプレーヤーでした。
私の知っている限り、バブル崩壊をキチンと予測していた人は3人います。
一人は本の著者で、もう一人は不動産コンサルタント、そしてあとの一人は不動産実務家でした。

その不動産実務家にイタリアレストランで御馳走してもらいながら、バブル崩壊の予測の話を聞いたのですが、聞きながらも「そんなことが起きるはずがない」と半信半疑でありました。
あまりの厳しい予想に、せっかくのイタリア料理が、ずい分まずく感じられたものです。
その人はその後、自分の不動産会社を一部上場まで持って行っています。
ちなみに社員数は20名ほどで、一部上場の会社の中では一番社員数が少ないのだそうです。