完璧な言語

頭の中で、一つの言語が極めて高度に完成していると、ほかの言語をなかなか受け付けないようです。
三島由紀夫のような日本語の天才で、IQの高そうな人でも、日本語以外の外国語はあまり得意でなかったようです(確か自分でも英語は苦手だと書いていたように思います)。
名前は忘れたのですが、あるドイツ人作家もドイツ語以外での思考や文章書きは、ドイツ語が邪魔して難しいと書いていました。

以前に我が家にホームステイしたポーランドの学生は、日本語、英語、ドイツ語、ロシア語、そしてポーランドが話せました。
日本語など、大学生だった私の息子よりも上手なぐらい。
私がドイツ語で話しかけてみると、今は頭が日本語モードになっているから、ドイツ語がうまく出てこないとのことでした。
ある数カ国語を話す日本人の言語学者(専門はロシア語を始めスラブ語のようです)は、チェコなどのスラブ語国に行く前に、どこかで英語のシャワーを浴びてしまうと、その国の言葉が出てこなくなってしまうと書いていました。

私のドイツ語は英語と比べると随分レベルが低いのですが、英語で話をしようとする時、英語よりも先にドイツ語の単語が出てきて、英語の単語が出てこなくて困ることがよくあります。
だからと言って、ドイツ語で喋ろうとすると、今度はぎこちないドイツ語しか出てこないので、余計にガックリきます。

完璧にドイツ語をマスターした日本人の言語学者がいるのですが、その人はドイツ語が上達し過ぎて、ほかの言語が学習できないらしいのです。
私は一つの言葉を「より深く」よりも、言語の種類を広げていく方に興味があるので「完璧な言語」が自分の頭の中にないことに感謝しています。