『高学歴大工集団』(秋元久雄・PHP研究所・1,400円)の紹介です。

ふつう建設業界では、営業や設計や施工管理以外の工程をすべてアウトソーシングしています。
大工や職人を元請け会社自体がかかえることはごく稀(まれ)。
著者が社長を務める「平成建設」では、4割をも社員を大工や職人が占めています。
しかも新卒学生からの採用。

「職人技は10代の時から修行を始めなければ一人前にならないのでは?」と私なども漠然と思っていたのですが、もし大学卒業後でもいけるのであれば、こんなに具合のいいことはありません。
大学を卒業してから大工を目指す場合、目標が明確だし、モチベーションの高さも問題ないと考えられるからです。
東大、京大、東北大、東工大、名古屋大、慶応、早稲田などの一流校からの応募も多いとのこと。

ドイツでもマイスター制度があり、一流のマイスター(技能者)は世間から尊敬され、社会的地位も高く、それがドイツ製品の評価と信頼感をもたらしていることは間違いありません。
一流の技能を持った人は、どんな時代でも強いのです。
上場企業の「部長」をやったとしても、いざとなったら何もできませんが、一流の技能者は引く手あまたです。

著者は24歳から40歳まで、デベロッパーやハウスメーカーで営業を行ってきたのですが、どこへ行ってもトップセールスマン。
商店主や地主のところを情報提供しながら回っているうちに、いろいろな相談を持ちかけられ、それが受注に繋がっていくというパターン。
私が知っている限り、抜群の成績を残しているセールスマンはみんなこのパターンです。

建築だけにとどまらず、営業や経営のことを学ぶことが出来た本ですが、一番気にいったのは、本の表紙にある、精悍な顔をした若い大工たちがずらりと並んだ写真でした。
この会社が持つスピリッツ(精神)に感銘を受けました。