業即信仰

松下幸之助の本を読んでいて、一番感じたのが「真剣さ」。
松下幸之助ほど「本気」で仕事に取り組んでいるか?」と問われれば、即座に「ノー」としか答えようがありません。
今この日本で、松下幸之助より成功した人がいるかと言えば、これまた「ノー」。
単に経済的だけではなく、人間的にも傑出した人物であることも間違いありません。

一時的に成功する人は少なくないのですが、それが長続きする人は極めて稀(まれ)なのです。
成功した経営者の本を読んで感銘を受けたと思ったら、5年もせぬうちに不祥事を起こしたり、会社が経営危機に陥ったりするのですから、本当に油断も隙もありません。

松下幸之助は東京に出た時に「ヨネクラ」という理髪店で散髪していたそうですが、そこの主人が散発の間「先日、創業記念の風呂敷を配ったのですが、そこには『業即信仰』と書きました。仕事そのものを神様への奉仕として努めていきたいと思っています」旨のことを話し、幸之助はその話にいたく感動したそうです。

私もそれを読み「ガ〜ン!」でありました。
仕事を神様への奉仕と考えるならば、不満も不安も存在しようがないのです。
神様への奉仕なのですから「我」を満足させるために無理をすることもないし、悩むこともない。
アメリカ人のように「ハッピー・リタイヤ」を考えなくてもいいわけです。

自分も「社会を発展させる一人の選手である」の自覚のもと「命をかけた真剣さ」が筋金入りの強さを生み出すのでしょう。
いずれにせよ、信仰にまで昇華された仕事への念いがないから、自信もないし、変な遠慮もしてしまうのだと思います。
「業即信仰」の言葉は、小さな自分の殻を打ち破ってくれました。
仕事とは「事(こと)に仕える」、即ち神事でもあるのです。
小さな我欲のために働いているのではないのだから、堂々と懸命に打ち込んでいけばいいのです。