日本が資金の逃避先に

deguchi2008-12-11

今日、1年ほど前に出版された世界経済の本を読んでいると、原油高や円安の話が出てきました。
ほんの少し前のことなのに、全く状況が変わっていることに驚かされます。
アメリカ発の金融の躓(つまづ)きなのに、それがあっという間に世界各地へと飛び火しただけでなく、バブル金融の崩壊が実体経済にもすぐに波及したことにもビックリ。
対岸の火事では終わらなくなってきました。

その国の経済の厳(きび)しさは、株の暴落よりも、むしろ通貨の下落に見ることが出来るのではないかと思うのです。
通貨が下がる国ほど大変。
そういう意味では、イギリスや韓国の経済は、アメリカ経済よりも危機の度合いが大きいように思います。
伝統と矜持を誇り、堅実だと思われていた欧州の銀行が、ふたを開ければ何のことはない、アメリカの投資銀行の神輿を担いでいただけだったことも、今回ハッキリしました。
欧州のプライベートバンクに資産を預けることが「ステイタス」のような気がしていたのですが、とんでもなかったのですね。

普通に考えれば、ウォール・ストリートのインチキ資本主義が幅を利かせていたアメリカの株価がもっと下がり、製造業を中心に比較的まっとうな日本経済の株価がもっと上がってもよさそうなものですが、現実はそうでもありません。
これはどういうことかと言えば、一つは円が上がっているので、ドルベースで行けば日本の株価はさほど下がっていないということ。
もう一つの理由は、さすがにアメリカのヘッジファンドといえども、アメリカの株を一気に売却すると、アメリカ国内から大きな非難を受ける可能性があるので躊躇しているということ。
その点「外国」の株なら、いくら売っても文句は出ないわけです。

ヘッジファンドは屋台骨がグラついているわけですから、とにかく換金することが緊急課題。
アメリカのファンドが、海外に投資していた資金を引き揚げ本国に持ち帰る過程で、投資先の国に「株安」と「通貨安」の現象が起こっています。
金利の安い「円」を借り、原油や食料に投機する動きもあったのではないかと思います。
それらの資金は今や大急ぎでアメリカや日本に帰っているはずです。
だから他国の通貨と比較すると「ドル高」で「円高」。

オバマ大統領が一番したいことは「貧富の格差の解消」。
オバマ大統領の根のところは一種の「社会主義」ではないかと思うのです。
ひょっとしたらアメリカは、最も選んではいけない人を大統領に選んだのかもしれません。
その目指す経済政策を取っていくならば、富裕層の資金がアメリカから逃げ出す可能性があります。
その逃げ出した資金はどこへ行くのか?
たぶんそれは日本だと思うのです。
ここ1,2年の経済環境は相当厳しくなると思いますが、嵐が過ぎ去ったあとの日本経済のポジションは、以前よりもずっと有利なところに位置しているのではないかという気がしています。