『漢字は日本語である』

『漢字は日本語である』(小駒勝美・新潮社・680円)を読むと、以前から知りたかったことが色々と氷解しました。
例えば「々」はどう読むのでしょう?
文部省が定めた「々」の正式な名称は「同の字点」。出版業界では「ノマ」とも呼んでいるそうです。
ワードでは「どう」と打てば出てきます。

アメリカ合衆国を日本では「米国」と書きますが、中国では「美国」(韓国でも)。
Americanのアクセントが「メ」にあるため、最初の「ア」が抜け「メリケン」となるわけですが、それを日本では「米」をあて、中国では「美」をあてたのだそうです。
ドイツは日本だと「独」、中国では「徳」。
フランスは「仏」と「法」。
ロシアは「露」と「俄」。このへんになると俄(にわ)かに分からなくなります。
イギリスの「英」やイタリアの「伊」は日中とも同じ。
メキシコの「墨」も同じ。ただしこれは日本人の方が分からないでしょう。

明治時代の日本人が本当に偉いと思うのは、西洋の文明とともに、それらに対応する漢字での熟語をこしらえていったことです。
余談になりますが、漢字だけでなく、岡倉天心の「茶の本」や新渡戸稲造の「武士道」などの名著が、見事な英語で書かれており、明治時代の日本の指導者層の語学力のすごさには脱帽するしかありません。

で、漢字の話に戻ります。
明治時代に日本で作られた漢字の熟語は、中国に逆輸入され、今でも使われています。
例えば次のような漢字。
保障、背景、必要、表現、表情、博士、不動産、不景気、材料、倉庫、財務、承認、出版、出席、初歩、抽象、意味、取消、宗教、改善、根本的、自由、民主、科学、哲学、理想、信用、人格、住所、社会、政党、経済など。
「うへ〜」とびっくりしました。
ちなみに「中華人民共和国共産党」は「人民」と「共和国」と「共産党」が日本語。
中国語だけでは成り立たないのです。