ミラノの一人旅

思いつくままに、ミラノのお話をさせていただきたいと思います。
ミラノへは、12月28日から1月1日までの5日間一人で行ってきました。
トータルで5日ですが、実質は現地丸2日半でした。

行きの飛行機の中で、座席についている受話器のようなものから、クレジットカードで話ができることを知り、さっそく家へかけてみました。
まさか高度1万メートルから、こんなにあっさりと電話できるとは思いもしませんでした。

ミラノ自体は観光都市というよりは、ビジネスの街といった性格の方が強く、観光する所は割合と限られているのではないかと思います。
それでもやはり観光客は多く、そのほとんどはミラノだけではなく、イタリア各地を回っているのだと思います。

ミラノ→ベニス→フィレンツェ→ローマといったコースが、イタリア旅行の定番ではないかと思います。
私のように2日半もしっかりミラノだけに滞在しているケースは、逆に稀ではないかと思いました。

ミラノ観光で特筆すべきところはドゥオモ(大聖堂)です。
500年かかって作ったというのも凄いですが、実際に中へ入って、その荘厳さにど肝を抜かれました。
圧倒的な迫力でした。
カトリックの信仰がなくても、こういうところに入ると敬虔な気持ちになりますね。

ミラノはイタリアの中でも、人々がよく働く地域で、全体的な印象から言っても、いい加減なところが比較的少なく、ビシッとしていたように思います。
イタリアの政党に確か「北部同盟」というのがあり、勤勉なイタリア北部の都市が稼いだお金を、南部の地域に回して帳尻を合わすのは、もう止めようという主張を持っています。
確かに北の勤勉な人たちにとっては、南の”ふにゃふにゃした”連中は気にいらんに違いありません。

日本人客も団体、個人とも多く、また若い女性も多く、イタリアは日本人の好みの観光地といえるでしょう。
泊まったホテルはハイヤット・ミラノで、昨年の10月にオープンしたばかりのホテルです。

事前に4冊ほどのガイドブックを買って読んでいたのですが、どの本にも載ってなくて、「ほんまに大丈夫かいな」とやや不安だったのですが、この懸念は見事に杞憂に終わり、ひじょうにいいホテルでした。
ただし、お値段も超一流で、日本の帝国ホテルをはるかに凌(しの)ぐ宿泊料には驚きました。

このホテルは街の中心であるドゥオモから歩いてすぐのところにあります。
新しい高級ホテルは、足の便が悪いところにあることが多いので、どうしてだろうと思っていたのですが、なんと元銀行だったそうです。
6階建てで、石造りでした。

建物自体は相当古く、100年以上たっているのは間違いないと思います。
古くても外観は汚くはなく、それなりの雰囲気を持っていました。
パリのハイヤットも元オフィスビルで、ミラノ、パリとも究極のコンバージョンといったところです。
日本も今コンバージョンが流行っていますが、ヨーロッパは間違いなくコンバージョンの先進地域ですね。

そんな超高級なホテルに、けっこう日本人の個人旅行客も多く、朝食を食べていると、そこにいる4組ほどの宿泊客が全部日本人ということもよくありました。
そしてそれぞれが、その洗練されたホテルの雰囲気に実によく溶け込んでいるのです。
今まではそんなケースは欧米人ばかりだったのですが、日本人もずいぶん成熟してきたなと感じました。

いずれにしても、中年男性の一人旅というのは珍しく、まあ私自身は慣れてはいるものの、やはり寂しく、客観的に見ても”見てくれ”のいいものではないことは、重々承知しております。

ミラノファッションという言葉があるぐらいで、ミラノはシャレた街だと感じました。
お店のショーウィンドーひとつとっても、センスがよく、世界の最先端をいっていることは間違いありません。

街を歩いて感じたのが、書店が実に多いということでした。
私の経験では、いい本屋がある街は知的水準が高いということで、都市によっては、大きな人口を持っているのに、本屋がほとんどない所がけっこうあります。

同じ東アジアでも、ソウルや台北、上海などには、いい本屋はありません。
東南アジアにいたっては、いい書店を期待する方が無理だという先入観すらあります。
ただ先日行ったシンガポールには、大きな本屋さんがあり、しかも人がいっぱいで、そこで何冊かの英語の本を買ったりもし、大変満足しました。

ミラノ(たぶんイタリア全体でも)の食事はおいしかったです。
どの店に入っても満足できるものでした。
イギリスやドイツでは、あまりおいしいものは期待できません。
(フランスでさえそうです!)
したがってヨーロッパでは、中華料理や和食の店を探して食事することが多いのですが、逆にミラノでは、中華や和食のお店をほとんど見かけることがありませんでした。

一人旅の時は、ブレザーやネクタイや革靴を持って行くのは面倒なのですが、今回は迷った末、持って行くことにしました。
持って行って大正解。
外は寒いので、ホテルのレストランを利用することもたびたび。
ということは高級レストランでの食事ということでもあります。

特に夜など、レストランの男性客はみんなネクタイにスーツ姿でした。
女性もドレスアップしています。
こういう場所では着飾って、みんなでその雰囲気を楽しむという一つの約束事なんですね。

日本へ帰ってから近くのイタリアレストランへ、親戚一同が集まって食事をするという機会があったのですが、私以外はみんなセーターだったのに、私一人がネクタイをしていました。
なんせイタリア帰りなもんで・・・

高級レストランで1人で入っては、間が持たないと思っていたのですが、ウェイターが合間合間に、気を利かせて話しかけてくれ、けっこう一人でも楽しめました。
(ただし英語を話せないとどうしようもありませんが)

同じレストランで昼食も食べたのですが、これが約1万円。
日本でも昼食で1万円というのは、ちょっと私の記憶にはありません。
外でピザを買ったら300円ほど。
まあ高いのも安いのも勉強ということで、納得はしております。