私にとっての理想の会社

中小企業の経営者の場合、一心不乱に働いてちょうどいいぐらいではないかと思います。
経営が上手く行ったら行ったで驕り高ぶり、本業が疎(おろそ)かになるケースも枚挙にいとまありません。
経営にも高度な「心技体」が求められるのだと思います。
世の中には「尊敬できる経営者」や「尊敬できる会社」というのが存在し、そういう人や会社に出会うと、こちらの背筋までシャンとしてしまいます。

たまにお金儲けが上手く、会社も隆々としているのに、どうしても尊敬できない経営者に出会うことがあります。
人格も品格も教養も高くないのにお金儲けだけには“やたら”傑出した才能があるケースです。
そういった人たちは長いスパンで見ていると消えていくことが多いのですが、没落もせずいつまでも勢いが続く場合もあるのです。
中には上場までしてしまうところがあるので驚いてしまいます。

20数年前にバブル崩壊の痛手を受け、その時は大いに反省したのですが、結局まわりの浮ついた雰囲気に押され「分」をわきまえなかったということに、敗因は尽きるのではないかと思いました。
他社は他社であり、自社は自社なのです。
自社のあるべき姿こそ求めていくべきであり、他社のことを気にする必要はないわけです。

そこで仮説なのですが、自分が理想とする会社の姿を考えてみたいと思うのです。
「下山の思想」ではなく、あくまでも「坂の上の雲」を求めて行くべきだと考えているのですが、当たり前のように「前年対比」という観念を用いて、前年よりも売上が上回る計画を立てるのが、果たして正しいのでしょうか?
伸びきった戦線を縮小し、売上やシェアを大幅にカットすることにより、会社の状態を良くする有益な方法だってあるわけです。

私は「安定的な収益」を一番大切に考えたいと思っています。
自分が株を買う場合でも、安定的な収益を上げている会社の株を買うようにしています。
会社にとって急成長というのは、決していいことではないのです。
じっくりじっくり利益が増えていくような会社が理想ですね。

もっと言えば会社が大儲けする必要があるのかどうか?
画期的な新商品を作り出した場合などは別ですが、利益分は顧客や協力会社とシェアするものではないかと思うのです。
会社が一方的に利益分を取りこんでしまっては、ちょっと具合が悪いような気もするのです。
人間だって栄養過多は肥満のもとではないですか。

すかいらーく」の元創業者の一人の言葉です。
「いい店の第一条件は、働いている人が誇りを持てること。
規模でもない。利益でもない。
何を仕入れて何を売るか、それは何でもいい。
同じ価値観を持って集まった仲間たちが、より豊かになるために、一緒に働いてくれた人たちが、より良い人生を送れるように、店を作っていきたいんだ。
働いている人が誇りを持ち、やりがいを感じ、そのうえでお客様に喜ばれる、そんな店や会社をつくりたい」