新聞を丹念に読んでの情報収集

第2次世界大戦のころ、ドイツ軍の動きを的確に予想するイギリスの民間人がおり、あまりに的確なのでドイツ軍もその人間をマークし出しました。
てっきり特殊な情報ルートが存在し、重要な情報がそこから漏れていると思われたからです。
しかしながらそのイギリス人は、すべて新聞などの公開された情報だけで分析していたということが分かりました。

かつてのソ連は秘密のベールに覆われており、ソ連を動かす首脳部の動向が外からはよく見えませんでした。
しかし優秀な「クレムリン・ウォッチャー」は、少ない新聞の情報からかなり正確な実態を探り出していました。
新聞をどう読んでいけば、そんなことが分かるのだろうと私など不思議に思っておりました。
そんな新聞の読み方が『実践・私の中国分析』(平松茂雄・幸福の科学出版・1,700円)を読むことにより、理解できたのです。

著者の平松茂雄さんは『人民日報』と『解放軍報』を丹念に読むことにより、正確に中国共産党と解放軍の動向を予測してきました。
『人民日報』は中国共産党の意向を酌んだ新聞、また『解放軍報』は解放軍の新聞です。
この両者の公開情報だけで十分だと著書の中で断言しています。

例えば主要な記事ではない、普通の小さな記事の中にポロッと真実が出てくることがあるそうです。
本当はポロッとではなく、その記事の中で必然的にそのことを書く必要があって書かれているのですが、そうした記事はメイン記事ではないため、中国共産党の意図がかかっておらず、意外に正直に書かれているとのこと。

ちょっと古い話ですが、ベトナム戦争の時に米空軍が中国の領空を(意図的か過失かは別として)かすめて飛ぶことがよくありました。
その都度『人民日報』は米国を非難する記事を載せることを忘れなかったのですが、1971年9月27日の496回目の領空侵犯を最後に、その記事は載らなくなったそうです。
当時は誰もその意味が解らなかったのですが、ちょうどその頃キッシンジャー周恩来と会談し、米中の劇的な関係改善が図られていたというわけです。

大規模な軍事演習を共産党のどの幹部が視察したかによって、あるいはその時その共産党幹部が軍服を着ているか、ふつうのスーツ姿であるかによっても、その共産党幹部がどこまで軍部に食い込んでいるのかが分かるそうです。
訒小平のあと、胡耀邦趙紫陽も軍部の支持を得られず、無名の江沢民が後を継ぎました。
しかしその江沢民も15年間の政権のあと、さらに権力の座に居座ろうとしたため、軍部の支持を失ったとのこと。
ある日の『人民日報』や『解放軍報』の微妙な記事の書き方から、平松茂雄さんはこのことが見抜けたのだそうです。