『世界一の庭師の仕事術』

deguchi2009-07-20

『世界一の庭師の仕事術』(石原和幸・WAVE出版・1,400円)の紹介です。

著者は学校を卒業し、生け花の魅力に取りつかれます。
それが高じて花屋さんに。
田舎の商店街の花屋に修行に行き、商売の基礎を体で覚えるところから出発。
そこの店主の花の売り方は本当にうまかったのですが、花束の作り方はあまり上手ではないことに気付き、いろいろな花屋を転々として勉強を続けました。

自分がやっと持てた最初の店は、飲み屋街のメイン通りから路地を2本も入った奥の奥。
売るための努力と工夫を徹底的に行い、徐々に繁盛店に。
そのコツは「目の前のお客さんを全力で感動させる」。
往復7時間かけて仕入れに行き、軽トラックにいっぱい買った花を、帰りに立ち寄りながら半分ぐらい売ってしまい、地元では「安さで勝負」で全部売り切ります。
わずか半年のうちに仕入れの車が軽トラック、箱バン、普通バン、2トンの保冷車へと、どんどん大きくなって行きました。
と、ここまでが人の3倍働けば成功への道を歩めるというお話。

長崎で一番の花屋になるという目標を掲げ、順調に大きくなり30店舗へ。
中にはたった5坪で年間売り上げが1億円を突破したお店もあったそうです。
そのお店などはあまりに売れるので、夜、店を閉めるのがもったいなく、ずっと売り続けているうちに明るくなって朝になることもしばしば。
それならばと3交代制で24時間営業にしたのだそうです。
と、ここまでは商売の天才的お話。
不動産業界でもよく聞く話でもあります。

長崎にすごい花屋がいるとの話を聞き、大手商社からフランチャイズで全国展開しないかの申し入れがあったのはこの頃です。
本を読んでいても「あっ、これは危ない!」と感じました。
人のことはよく分かるのです。
著者自身も天狗になっており、長崎での30店舗も本当は著者独自の現場感覚だからこそ運営出来ていたのです。
東京港区白金の本社ビルで現場から離れ、偉くなってしまったのでは上手くいくはずがありません。
結果、負債8億円を背負い、大失敗の末ほうほうの体で長崎に帰ることに。
これも不動産業界でよく耳にする話。

地元に帰った著者は、ひょんなことから花だけではなくガーデニングにも関わることになりました。
これまたひょんなことに、イギリスで一番権威のあるガーデン・コンテスト「チェルシー・フラワーショー」に挑戦することになりました。
さまざまな困難と闘い、遂にはゴールドメダルの獲得へ。
しかも3年連続という前人未到の記録まで作りました。
今後著者がどういう成長もしくは変身をしていくのかが楽しみです。
それにしても、どんな努力も才能も「慢心」の前には音を立てて崩れさるのは恐ろしいことです。