リピーター・ファースト

28歳の時に不動産会社を始め、自分の(時間やエネルギーの)すべてを会社に注いできました。
創業経営者はみんなそうだと思います。
誰よりも早く会社に出社し、誰よりも遅くまで会社で仕事をしていました。
つまり会社のカギを開けるのも、最後にカギを閉めるのも私だったわけです。
どこかへ出かけた後も、必ず一度会社に戻っていました。

経営者仲間だった人が「会社は個人を豊かにさせるためにある」と言っていたのが印象に残っているのですが、私は自分個人のことなどどうでもいいから会社を豊かにしたいと思っていました。
情熱のすべてを会社に注いできたのですが、幸か不幸か、大きくもならず、潰れもせず、今日まで来ました。

もし私が会社経営をしていなかったならば、多くのことを経験できなかったままで終わっていたと思います。
楽しいことも苦しいことも、いっぱい経験してきました。
さすがに会社経営していると「世間が分かる」のです。

かつての30代や40代と比べると、今の忙しさは多分10分の1になっていると思います。
しかし経営的な安定さは10倍になっています。
忙しく働くことだけが能ではないのです。
ビジネスには「儲けのコツ」のようなものがあり、頭を使って早くそれに気がついた人から儲かっていくようになっているようです。
が、大多数の人は気がつく間もなく、ピークアウトしてしまいます。

最近になって商売の真骨頂が分かってきました。
同じ顧客に何度も商品やサービスを提供していくのが、真の商売なのではないかということです。
いわば「リピーター・ファースト」なのです。
一度きりの取引で終わるビジネスモデルではいけないのです。

例えばマンションデベロッパーは、1度売ってしまえばそれで終わりのビジネスです。
次の物件は、また一から始めなければなりません。
景気のいい時は“どんどん”マンションが売れるものだから、次のネタである土地を仕入れなければなりません。

が、景気がいいと高く仕入れなければならないわけです。
そして高く仕入れた土地の上にマンションを建て、それが完成した時に景気が悪ければ、売れずに不良在庫となってしまいます。
その時に借入金が多かったり、損益分岐点が高かったりすると、あっさりとバンザイしてしまわざるを得ないのです。
財閥系や電鉄系を除くマンションデベロッパーで、社歴30年のところはないのではないでしょうか。
大抵は途中で倒産しているか、吸収合併されているかのどちらかなのです。