腹八分目

「腹八分目」というのは若い頃はあまりピンと来ない考え方でした。
食事にしたってお腹いっぱいに食べていたし、仕事だって常に全力で立ち向かうのがいいと思っていました。
腹八分目なんて、ちょっと手抜きの考え方のような気がしていたわけです。

しかしながら最近、これはかなり大事なことではないかと感じ始めてきました。
食事でも文字通り腹八分目にしています。
結果、胃腸の調子が劇的に良くなりました。
胃腸だけでなく、ほかの内臓も具合が良くなります。
原因不明の体の不調は、内臓の疲れから来ることが多いのではないかと推測しています。

株の本を読んでいても「腹八分目」の考え方が出てきます。
株においては欲は敵なのです。
目いっぱい儲けようとすると、どこかで綻(ほころ)びが出て、売り買いのタイミングを逃してしまうというわけです。
「頭とシッポはくれてやれ」であって、欲いっぱいに最安値で買って最高値で売るなんてことは不可能なのです。

腹八分目は余裕の哲学でもあります。
2割の余裕を残しておくと、不測の事態にも対応しやすくなります。
食事の面でも仕事の面でも、若い頃は腹八分目どころか「腹十二分目」でありました。
今まで「腹十二分目」を目指すようなモーレツ会社は、3年ぐらいは絶好調なのですが、やがてガタガタになって、下手すると破綻してしまうことが多かったように思います。

上場会社の役員になる人たちは、当然仕事が出来るわけですが、私が知っている限り、みんな温和で紳士の雰囲気があるように思います。
ガラッパチな人は、いくら仕事が出来ても重役にはなれないのかもしれません。
言い換えれば「腹八分目」すなわち8割ぐらいの力であても、十分に実力の発揮できる人が役員になれるということです。

仙台楽天田中将大投手だって、最初から最後まで全力投球をしているわけではありません。
普段は6割から8割ぐらいの力で投げ、ここ一番のピンチの時のみ全力で立ち向かいます。
そのメリハリのつけ方が大投手の大投手たるところ。
大いに参考にしたいと思うのです。