不動産を考える その4

キャピタルゲイン狙いは不動産業の本筋ではないということを、マンションデベロッパー業を引き合いに出し、長々と説明してきました。
やはりインカムゲインが主流であるべきだと思うのです。
地域密着型の不動産会社の場合、その地域を離れては業務が成り立ちません。
その地域の繁栄と、会社の商売繁盛とは一体なのです。
インカムゲインを上げる不動産を、その地域に集中させることは大切なことです。
そうすることにより管理もしやすくなるわけです。

大阪でビルを8棟自社所有している、知人の不動産会社があるのですが、そのすべてが歩いていける範囲にあり、極めて少ない人数で運営できているそうです。
不動産会社にとって「効率」とは、そういうことなのだと思います。
車を長時間運転していると、もうそれだけで仕事をした気分になりますが、移動の間は収益は上がりません。

若い頃に不動産の師匠から言われたことがあります。
「自分の手の届く範囲で、小さなマンションなどをコツコツと買い、将来(老後も含む)に備えておくべきだ」。
その頃は売買仲介業がメインだったのですが、売買仲介は波が大きいし、毎月の安定収入として計算できないのです。
毎月毎月ゼロからのスタート。
毎年年末に、次の年の経営計画書を書くのですが、売買仲介をメインの事業としていた頃は、計画の立てようがありませんでした。
目標は一応書くのですが、それは根拠のない数字。
もう少し安定した収入源を持たなければと、いつも感じていました。

個人投資家なら、所有収益物件を日本各地のみならず、外国でも持っていてもいいのかもしれませんが、不動産会社の場合は、やはり地域を集中させるべきだと思うのです。
所有収益物件を増やしていく場合、時間をかけてコツコツと増やしていくことも、とても大事なことだと思うのです。
急激に増やそうとするから、バランスが崩れて、おかしなことになるのです。
長期にわたって、場合によっては自分の代だけではない長いスパンで、物事を考えていくべきなのかもしれません。

自分たちの会社が食べていけるところまで、安定収入が確保できるようになったなら、やはりその地域の発展に貢献していかなければいけないと思うのです。
ムリのない範囲で、街の発展や美化や犯罪防止に協力。
たまに奉仕活動と自分の見栄とがゴッチャになってしまっていたり、本業が疎(おろそ)かになるほど“のめり”込んだりする例を見かけますが、経営者としては論外です。
奉仕は無私の心で、出来るだけ人目につかないように、また息長くやっていくべきだと思うのです。
奉仕のように、一見いいことをやっているように見える行為でも、自分の器を超えたことをすると、すべてが破綻してしまうことがよくあります。