『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』

deguchi2009-07-04

『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(齊藤正明・マイコミ新書・780円)の紹介です。

バイオ系の研究所に勤務していた著者は、マグロの「鮮度保持剤」の開発に従事していたのですが、ある日上司から「一度マグロ船に乗ってこい」との指示を受けました。
乗船した船は全長わずか20m。
そこに9人もの男たちが乗り、一度港を離れれば40日以上も陸に戻ることない共同生活。
娯楽施設もなく、医療施設もなく、電話も通じない毎日を、漁師たちはイライラした様子を見せずに過します。
そこには「上手なストレスの受け止め方」や「上手なコミュニケーションの仕方」があったのです。

会社員である著者がいきなりマグロ船に乗り、まずぶつかった難問が「船酔い」。
結局最後まで船酔いし、乗船中吐かなかった日は3日だけだったそうです。
マグロ船の中で一番偉いのは「親方」。
親方は船のオーナーであり、どの海域でマグロを捕るかの決定者でもあります。
それに対し船長はそこへ船を動かすのが役割。

極限にまで達する肉体労働。
かといえば何もやることがない日もあり、退屈さと向き合う時間。
6mもの波に翻弄される大しけ。
マグロ漁が不発に終わる心配。
狭い船で24時間顔を突き合わせるストレス。
しかし漁師たちは何事もないように淡々と“やるべきこと”をこなしていきます。
海の上ならではの独特の諦観、もしくは楽観があるようなのです。
普段の生活ではまず気がつかないことを、いろいろと教えてくれた1冊でした。