不動産の今の状況

市場では住宅需要の減退傾向が見られるようです。
新築マンションの完成在庫が増加したり、販売現場への集客やチラシ反響が減少したりしています。
業績悪化で倒産する建売業者も出てくるのではないでしょうか。

今回のバブルは、90年代バブルと比べると2つの特徴があります。
ひとつは「局地的」ということ。
もうひとつは「ファンド」が不動産購入の大きな担い手であったことです。
ここにきて、国内のファンドには息切れ感が出てきました。
ただし外国のファンドは、まだまだ積極的なところも少なくなく、特にユーロ圏から見れば円安で、日本の不動産はバーゲンセールで買えるような感じなのでしょう。

今年の前半は新築建売の売れ行きがよくなかったようです。
これは若年層の動きが鈍ったため。
これからは不動産市場でも、中高年層が主役になっていきそうです。
たとえば戸建てを売ってマンションを買う「逆買い替え」。
あるいは老後のための不動産投資。
建替えが減少しリフォームが活発なのも、中高年層の動きと関係があるのかもしれません。

企業の不動産需要も強いものがあります。
工場や倉庫や店舗なども、今まではリースでの需要が多かったのですが、購入の動きも活発です。
寮や社宅用地の購入の動きすらあります。
賃貸市場でも企業の需要は強いようです。
ただし地方の中小企業は厳しいところも多く、二極化しています。

不動産業者が買い取って、処分(売却)がまだの在庫が膨らんできています。
例えば都心の高級住宅地では、業者売主物件比率が高水準になっており、またデベロッパーの商品在庫も増加しています。
これはバブルのいつか来た道。
金融が引き締まったり、金利が上昇したりすると、あっという間に損切りや投売りが始まりそうな状況にあるのかもしれません。
少なくとも転売目的の土地購入は、危険水域に入ってきました。

仮に事業用地を探しているなら、今は焦ることなく、じっくりと吟味。
総合点で満たない条件の土地はパスする勇気も必要です。
今は我慢の時期。
もう少ししたら、いい土地や安い土地が市場にどっと出てくる可能性があります。


市場の変化に合わせ、各社の戦略も変化します。
大和ハウスは、今後は首都圏回帰という戦略です。
ケネディ・リートは、投資対象を住居系からオフィスに入れ替え。
東京圏の中規模ビルを主体にしたオフィス特化型のリートにします。
住友林業は子会社を通じ、マンションリフォーム分野に進出。
海外での新規事業も画策し、住宅事業だけに頼らない戦略を打ち立てます。
住友不動産の、1,000万円ぐらいの資金で新築並みに一新という「新築そっくりさん」は依然好調です。

街の不動産店も、新しい方向を打ち出さなければ生き残れません。
まずは会社全体の損益分岐点を下げる努力を。
広告手法の見直しも必要です。
賃貸管理の流れや、あるいは社内事務の流れの見直しとカイゼン
積極的に行こうとするなら、キャッシュポジションを高め、今後出てくる不動産投売に、すぐに対応できる体勢も整えておかねばなりません。

今後の金融情勢や市場動向をよく観察する必要があります。
今は完全に事業構造の転換期なのです。
不動産業の枠から離れ、新しい視点で物事を見る事も大事。
極論すれば、宅建業の範囲から外れる方がいいかもしれません。
いずれにせよ、得意の分野を掘り下げることが一番です。