『志高く 孫正義正伝』(井上篤夫・実業之日本社・952円)

20年ほど前に、パソコンがそんなに普及していない頃、孫正義さんの公演を聞いたことがあります。
パワーポイントを使って穏やかに話す姿と、その内容の凄さとのギャップに戸惑いながら、「とんでもない人物と、とんでもない機械が世の中に出てきた」と驚愕しました。

時として強引過ぎる商売に、毀誉褒貶はあるかもしれませんが、間違いなく現代の怪物だと思います。
ここ一番に見せる集中力と、爆発的な実行力は並々ならぬものがあり、舌を巻くばかりです。
もし自分が20歳代か30歳代であるならば、完全に憧れの人にしていたに違いありません。

韓国が経済危機に陥ったときに、金大中大統領から韓国経済をどうしたら立て直すことが出来るかを聞かれ、「やるべきことが3つあります。まず1つ目がブロードバンド、そして2つ目がブロードバンド、最後に3つ目がブロードバンド」と孫正義氏。
同席していたビル・ゲイツも「100パーセント賛成です」との返事。
いま韓国はブロードバンド率が75パーセントで世界一。
その裏には、そんなエピソードがあったとは知りませんでした。

一方、肝炎で長期入院し、死ぬ間際までいく苦労もしています。
一流の進学高校を中退してアメリカに渡ったり、翻訳機を発明してシャープに1億円で売ったり、ヤフーやボーダホンの買収など、どれをとっても劇的な話。
読み物としては、最後までひじょうに面白く読めました。
さて続編は今後どうなっていくのでしょうか?