式年遷宮(しきねんせんぐう)

伊勢神宮の「式年遷宮(しきねんせんぐう)」が2年後の平成25年に行われます。
式年遷宮とは、20年に1度、神殿を始め建物や装束などをすべて新しく作りかえるという行事です。
1,300年にわたって20年に1度行われており、どうして建て替えなければいけないのか、不思議と言えば不思議な行事です。

20年に一度作りかえることにより、常に若々しく、すがすがしい状態が保てるということなのかもしれません。
また連綿と後世にその技術を伝えることもできます。
「神」というのは、ある意味「知的エネルギー体」だと思うのですが、器の部分を新しくしながら、永劫に神宮の霊的な部分が引き継がれていくわけです。

東京などでは、まだ使えるビルの建替え工事をよく見かけます。
一見もったいないように見えるのですが、建て替えた方が圧倒的に効率のいいビルが出来上がります。
経営的にもペイするわけです。
今までこの「もったいなさ」と「経済的効率の良さ」とをどう考えたらいいのか分からなかったのですが「神様でも20年に一度建て替えられるのだ」と考えるとスッキリと納得できました。

カトリックの教会は、何十年もかかって上へ上へと塔を上げていき、最後は見上げるような大聖堂が出来上がります。
伊勢神宮の神殿は決して大きなものではなく、日本の最高神にしては実にシンプルなのです。
ベルサイユ宮殿の豪華絢爛さと、伊勢神宮のシンプルな美しさは、文化・哲学の対極をなしているのではないかと思います。

伊勢神宮のご祭神である天照大神(あまてらすおおみかみ)から、確か6代下った子孫が、初代天皇神武天皇です。
日本は神話と現代の歴史とが繋(つな)がっているのです(例えばギリシャ神話は「現在」とは繋がっていません)。
天照大神はもともと皇居で祭られていたのですが、15代天皇崇神天皇の時代に皇居を出て各地をめぐられたのち、今の神宮の場所に鎮まられました。
従って伊勢神宮には2,000年の歴史があり、また式年遷宮は1,300年の歴史を持ち、62回目が2年後に行われるというわけです。